AIのほうが人より創造的って本当?研究では、平均的な人の発想はAIが上回ったが、最も独創的な人の答えはAIと並ぶか上回っていた

「AIのほうが人より発想力がある」という研究の話を聞いて、作る意味がわからなくなった人もいるかもしれません。研究を読むと、たしかに発想のテストでは、平均的な人の得点をAIが上回っていました。ただし、最も独創的な人の答えはAIと並ぶか上回っており、比べられたのは数十秒〜数分で答える短いテストです。「AIのほうが創造的」は、条件つきの結果です。
3行でわかる
- 英語圏の256人と3つのAIを比べた研究では、日用品の使い道を考えるテストで、平均の得点はAIが上回りました。一方で、最も独創的な人の答えは、AIと並ぶか上回っていました。
- 米国の研究では、詩にふだん親しんでいない人が有名な詩人の詩とAIの詩を見分けた正答率は46.6%で、偶然の50%に届きませんでした。
- 英国の実験では、AIの案は発想の得点が低い書き手を大きく助けた一方、物語どうしを似せていました。比べられたのは短いテストで、作品づくり全体ではありません。
01 結論から言うとAIは人より創造的なの?
短い発想のテストでは、平均的な人よりAIの得点が高いという結果が複数出ています。ただし、最も独創的な人はAIと並ぶか上回っており、比べたのは作品づくり全体ではなく、短時間で案を出す力の一部です。
研究でいう「創造性」は、多くの場合「発散的思考」のテストで測られます。たとえば「ロープの変わった使い道をできるだけ考える」のように、ふつうでない案をどれだけ出せるかを調べるものです。
このテストは、創造性の一部を測る方法です。米国の研究の著者たちも、こうしたテストが測るのは「創造的な可能性」で、実際の創作の成果を保証するものではないと書いています[2]。
つまり、「AIのほうが創造的」という見出しは、「短い発想のテストで、平均的な人より高い得点だった」と読みかえるのが正確です。
02 研究とデータでわかっていること人とAIの発想を比べた研究では、何がわかった?
平均ではAIが上回る一方、人の得点は幅が広く、上位の人はAIと並ぶか上回りました。人の弱点は、質の低い案が混ざることでした。文章では、読み手がAIの作と見分けにくいこともわかっています。
KoivistoとGrassini(2023)[1]
ロープ・箱・鉛筆・ろうそくの「ふつうでない使い道」を、1つの物につき30秒で考えてもらい、人と3つのAI(ChatGPTのGPT-3.5とGPT-4、Copy.Ai)を比べました。平均では、意味の離れ具合の計算と、人による採点のどちらでもAIが上回りました。
一方で、最も高い得点を出した人の答えは、AIと並ぶか上回っていました。人の採点で、人の最高点をAIが上回ったのは、箱についての2回だけでした。人の弱点は、質の低い案が混ざる割合の高さで、AIの答えにはそれがありませんでした。
対象: 英語を母語とする19〜40歳の256人(英国・米国・カナダ・アイルランド)と、2023年3〜4月時点の3つのAI / 限界: 物の使い道を考える1種類のテストだけです。AIが学習した文章の中に答えがあった可能性も、著者たちは挙げています。
Hubertら(2024)[2]
物の使い道、ありえない出来事の結果、互いに無関係な単語を挙げる、という3種類の発想のテストで、151人とGPT-4を比べました。答えの数をそろえたうえで、どのテストでもGPT-4のほうが独創的で、説明もくわしいと採点されました。
ただし、無関係な単語を挙げるテストでは、グループの中で1回しか出てこない単語が、人の答えでは69.92%、GPT-4では47.95%でした。人の答えのほうが、人どうしで重なりにくかったことになります。
対象: 米国で生まれたか住んでいる、英語が堪能な151人(平均41歳) / 限界: 独創性は、言葉の意味の離れ具合をコンピュータで計算したものです。著者たちは、AIは人に指示されないと案を出さないことと、テストの得点が実際の創作の成果につながるとは限らないことを挙げています。
DoshiとHauser(2024)[3]
英国の293人に8文の短い物語を書いてもらい、AIの案を見られる条件と見られない条件で比べました。もともと発想の得点が低い書き手では、AIの案を5つ見られると「よく書けているか」の評価が最大26.6%上がり、得点の高い書き手と並びました。
得点の高い書き手には、AIの案はほとんど影響しませんでした。また、AIの案を使った物語どうしは、人だけで書いた物語より似ていました。
対象: 英国の293人の書き手と、600人の読み手による評価 / 限界: 8文の短い物語を1回書く実験です。長い作品や、ふだんから書いている人での結果はわかりません。
PorterとMachery(2024)[4]
シェイクスピアなど10人の詩人の詩と、その作風をまねてAIが作った詩を見分けてもらいました。正答率は46.6%で、偶然の50%をわずかに下回り、AIの詩のほうが人の作だと判断されやすい傾向がありました。
別の696人の実験では、AIの詩はリズムや美しさなどで高く評価されました。一方、「人の詩人が書いた」と伝えると、14項目のうち12項目で評価が上がりました。
対象: 詩にふだん親しんでいない参加者(見分けの実験1,634人、評価の実験696人) / 限界: 英語の詩の研究です。詩をよく読む人や、ほかの言語の作品で同じになるかはわかりません。
4つの研究を、作り手が気になる問いごとに並べると次のとおりです。
| 気になること | 研究でわかったこと |
|---|---|
| AIは人より発想力がある? | 短いテストの平均ではAIが上。最も独創的な人はAIと並ぶか上回った[1] |
| 人の答えの弱点は? | 質の低い案が混ざる割合が高かった[1] |
| AIを使えば誰でも追いつける? | 得点の低い書き手は大きく伸びたが、物語どうしが似た[3] |
| 読む人はAIの作と気づく? | 詩では見分けられず、AIの詩を人の作と思いやすかった[4] |
03 まだわかっていないこと作品づくりでも、AIのほうが上なの?
まだわかっていません。研究の多くは数十秒〜数分の短いテストや短い文章で、何を作りたいかを決め、時間をかけて仕上げる作品づくりを人とAIで比べた研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。
- 発想のテストの得点が、実際の作品の評価や、作り手としての成果につながるかは、人でも確かめきれていません。AIではなおさらです[2]。
- 研究の多くは英語圏の参加者と英語の課題です。日本語の作品や、絵・音楽で同じ結果になるかはわかりません。
- AIは更新が速く、2023年のAIの結果は今のAIには当てはまらない可能性があります。著者たちも、半年後には結果が変わりうると書いています[1]。
04 今日からできること「AIのほうが上かも」と不安なとき、何ができる?
研究の結果を作り手の側から使うなら、AIを見る前に自分の案を出す、たくさん出してから選ぶ、作り手と制作の背景を添える、の3つです。どれもお金はかからず、今日から試せます。
AIの案を見る前に、自分の案を先に書く
AIの案を使った物語どうしは似やすくなっていました。テーマが決まったら、AIに聞く前に、自分の案を紙に3つ書いておきます。あとでAIの案と見比べると、自分にしか出なかった案がわかります。
目安 1テーマ5分
案は数を出してから、選ぶ時間を取る
人の弱点は、質の低い案が混ざることでした。思いついた案を10個書き出し、いちばんよいものを1つ選ぶ練習をします。選ぶ基準を書いておくと、自分の好みも見えてきます。
目安 10個出して1つ選ぶ、15分
作品には、作り手と制作の背景を添える
詩の実験では、「人の詩人が書いた」と伝えるだけで、多くの項目で評価が上がりました。発表するときは、何を考えて作ったか、どこに時間をかけたかを短く添えます。
目安 作品1つにつき3〜5行
AIを使う絵描きの作品の目新しさがどう変わったかは「AIを使う絵描きは、作品が増えて評価も上がる?」に、アイデア出しで案が似る問題は「AIでアイデアを出すと、みんな似た案になる?」にまとめています。描く・書く気そのものがなくなったときは「AIがあるのに練習する意味があるのか」もあわせて読めます。
05よくある質問
AIのほうが創造的なら、人が作品を作る意味はない?
研究が比べたのは、日用品の使い道を短時間で考えるといった発想のテストで、作品づくり全体ではありません。そのテストでも、最も独創的な人の答えはAIと並ぶか上回っていました。何を作りたいか決めて選び、仕上げるところは、研究でまだ比べられていない部分です。
AIの書いた詩や文章は、人が書いたものと見分けられる?
詩にふだん親しんでいない人では、ほぼ見分けられませんでした。米国の研究では、有名な詩人の詩とAIの詩を見分けた正答率は46.6%で、偶然の50%をわずかに下回りました。AIの詩のほうが人の作だと判断されやすい傾向もありました。
発想が苦手な人ほど、AIを使えば追いつける?
英国の短い物語の実験では、もともと発想の得点が低い書き手ほど、AIの案を見たときの評価の伸びが大きく、得点の高い書き手と並びました。一方で、AIの案を使った物語どうしは似やすくなっていました。追いつける面と、ほかの人と似てしまう面の両方があります。
出典
- Koivisto M, Grassini S (2023). Best humans still outperform artificial intelligence in a creative divergent thinking task. Scientific Reports, 13, 13601(2024年に著者訂正あり: 10.1038/s41598-024-54745-y). https://doi.org/10.1038/s41598-023-40858-3
- Hubert KF, Awa KN, Zabelina DL (2024). The current state of artificial intelligence generative language models is more creative than humans on divergent thinking tasks. Scientific Reports, 14, 3440. https://doi.org/10.1038/s41598-024-53303-w
- Doshi AR, Hauser OP (2024). Generative AI enhances individual creativity but reduces the collective diversity of novel content. Science Advances, 10(28), eadn5290. https://doi.org/10.1126/sciadv.adn5290
- Porter B, Machery E (2024). AI-generated poetry is indistinguishable from human-written poetry and is rated more favorably. Scientific Reports, 14, 26133. https://doi.org/10.1038/s41598-024-76900-1


