AIの偽画像を見抜く練習やコツは、効く?研究では、具体的なコツで偽画像を信じる人は減ったが、本物の記事まで疑われやすくなり、声の聞き分けは練習してもほとんど上がらなかった

「指が6本ならAI」「文字が崩れていたらAI」。偽画像を見抜くコツは、SNSでもよく見かけます。覚えておけば、だまされずにすむのでしょうか。研究では、具体的なコツには偽画像を信じる度合いを下げる効果がありましたが、本物まで疑いやすくなる面もありました。コツは備えのひとつにとどめ、見た目だけで決めない習慣とセットにするのが確かです。
3行でわかる
- 米国の大人1,012人の実験では、「不自然な細部」「崩れた文字」「くっきりした手前とぼけた背景」の3つのコツを読んだ組は、何も読まなかった組よりAIの偽画像つきの見出しを信じる度合いが下がり、本物と偽物を見分ける成績は一般的な注意を読んだ組より上がりました。
- ただし、コツを読んだ組は本物の見出しも信じにくくなりました。顔を見抜く練習は研究で結果が分かれ、AIの声の聞き分けは約12分の練習でほとんど上がりませんでした。
- 備えは、具体的なコツを知っておく、見た目だけで「偽物」と決めない、声は別の方法で確かめる、自分の判断に自信を持ちすぎない、の4つです。
01 結論から言うと偽画像を見抜くコツは、覚える意味がある?
意味はあります。具体的なコツを読んだ人は、AIの偽画像を信じる度合いが下がっていました。ただし、コツに当てはまらない偽画像もあり、本物まで疑いやすくなる面もあるため、コツだけに頼らないことが大切です。
AIで作られた画像は年々自然になり、「よく見れば必ずわかる」とは言えなくなっています。研究で効果が確かめられているのは、コツを知ると「偽物を信じる」間違いが減る、というところまでです。
逆に、疑う気持ちが強くなりすぎたときのことは偽情報やディープフェイクが気になって、何も信じられなくなったにまとめています。
02 研究とデータでわかっていること見抜く練習やコツで、本当に上達する?
具体的なコツは偽画像を信じる度合いを下げましたが、本物も信じにくくなりました。顔を見抜く練習は、正答率がほぼ2倍になった研究と、一般の人では偶然と変わらなかった研究があり、AIの声は練習してもほとんど上達しませんでした。
Guoら(2025)[1]
米国に住む大人1,012人を、くじ引きで3組に分けました。1組目はAI画像の具体的な3つのコツ(不自然な細部、意味の通らない文字、くっきりした手前とぼけた背景)を、2組目はSNS会社の案内をもとにした一般的な注意(大げさな話を疑う、自分の感情に注意する、画像が本物か確かめる)を読み、3組目は何も読みませんでした。コツや注意を読んだ2つの組は、何も読まなかった組より偽画像つきの見出しを信じる度合いが下がりました。具体的なコツの組はその度合いがいちばん低かったものの、一般的な注意の組との差ははっきりしませんでした。本物と偽物を見分ける成績は、具体的なコツの組が一般的な注意の組より上がりました。一方、コツを読んだ2つの組は、どちらも本物の見出しを信じる度合いまで下がっていました。
対象: 米国の英語を母語とする大人(18〜95歳) / 限界: 使った偽画像のうち、コツに当てはまる特徴があったのは半分。文字をきれいに描けるAIも出てきており、コツは古くなりうる。
Dawelら(2026)[2]
細かい不自然さ探しではなく、顔の全体の印象(左右のそろい方、整い方、個性、表情の豊かさなど)に注目させる練習を試しました。練習していない顔で試すと、3枚からAIの顔を選ぶ課題の正答率は41.4%から81.1%に上がり、1枚ずつ判断する課題でも、本物とAIの両方で正答率が上がりました。練習前は、当たったときと外れたときで自信の度合いが変わりませんでしたが、練習後は当たったときのほうが自信が高くなっていました。
対象: オーストラリアの大学で募った18〜40歳の45人 / 限界: 使ったAIの顔は1種類の画像生成の方式で作ったもの。上達がどのくらい続くか、動画や声でも同じかはわかっていない。
Grayら(2025)[3]
英国の研究チームが、AIの顔によく出る描き方の不自然さを教える約5分の練習を試しました。一般の参加者は、練習なしではAIの顔を本物と思いやすく、成績は偶然より悪くなっていました。練習するとその偏りは消えましたが、成績は偶然と変わらない水準にとどまりました。顔を見分けるのが特に得意な人では、練習後に偶然を上回りました。
対象: 顔の識別が特に得意な人283人と、一般の参加者381人(2つの実験の合計) / 限界: 練習は約5分と短く、効果がどのくらい続くかは調べていない。
声についての実験では、中国の30人が、人の声とAIで作った声を「人」「AI」と答えを見せながら約12分聞き比べました。脳波には練習後に違いが表れたものの、聞き分けの成績は練習の前も後も低いままで、上がり方はわずかでした。[4] 顔の研究の論文も、耳飾りの左右の違いや体の形のおかしさなど、細部を探させるこれまでの練習は、効果がないか1割ほどの上積みにとどまり、本物の顔をAIと間違える人を増やしていたとまとめています。[2]
03 まだわかっていないこと練習の効果は、ずっと続く?
わかっていません。今ある研究は、練習の直後に、研究用に用意した画像や声で試したものが中心です。何週間後も覚えているか、SNSで偶然見かけた画像でも見抜けるかは、まだ確かめられていません。
- コツの研究は米国の大人、顔の練習は主にオーストラリアの大学で募った人が対象で、日本の人で確かめた研究は今回調べた範囲では見つかりませんでした。
- AIの作り方は次々に変わるため、今日のコツや練習が、新しいAIの画像にも通じるかはわかっていません。
- 動画で効く練習があるかは、ほとんど調べられていません。
- 本物まで疑ってしまう副作用を、どうすれば小さくできるかもはっきりしていません。
04 今日からできることだまされにくくなるために、何を準備する?
具体的なコツを3つ知っておき、それでも見た目だけで本物か偽物かを決めないこと、声は聞き分けに頼らないこと、自分の判断に自信を持ちすぎないことの4つです。どれもお金をかけずに、今日から始められます。
具体的なコツを3つだけ覚える
「指や手足など細部の不自然さ」「看板や服の文字が意味をなさない」「手前だけくっきりで背景がぼやけている」。実験で本物と偽物を見分ける成績をいちばん上げたのは、こうした具体的なコツでした。ただし当てはまらない偽画像も多いので、「見つからない=本物」とは考えません。
目安 5分
「AIっぽい」だけで偽物と決めない
コツを読んだ人は、本物の見出しも信じにくくなっていました。広める前や「偽物だ」と言う前に、最初に誰が出したか、ほかの報道機関や公式の発表があるかを確かめます。確かめ方は怪しいニュース、ネットで検索して確かめれば大丈夫?にまとめています。
目安 1件につき2〜3分
声は「聞き分け」に頼らない
練習しても聞き分けはほとんど上がりませんでした。家族や職場の人の声でお金や個人情報の話が来たら、一度切って、自分が知っている番号にかけ直すなど、声以外の方法で確かめると決めておきます。
目安 家族で5分話し合う
自分の判断に、自信を持ちすぎない
練習前は、当たったときと外れたときで自信の度合いが同じでした。「自分は見抜ける」と感じても、大事な判断や拡散の前には、ほかの手がかりを1つ足すようにします。SNSの「AI生成」の表示の扱いはSNSの「AI生成」の表示、付いていない投稿は本物と思っていい?にあります。
目安 判断の前に1つ確かめる
本物の写真を偽物だと言ってしまったときのことは本物の写真を「AIの偽物だ」と言ってしまったにまとめています。
05よくある質問
AIの偽画像を見抜くコツを覚えれば、だまされなくなる?
だまされにくくはなりますが、ゼロにはなりません。米国の1,012人の実験では、具体的な3つのコツを読んだ組は偽画像つきの見出しを信じる度合いが下がりましたが、研究で使った偽画像のうちコツに当てはまる特徴があったのは半分でした。本物の見出しまで信じにくくなる面もありました。
AIの顔を見抜く練習は、どのくらい効く?
研究で結果が分かれています。オーストラリアの45人の研究では、顔の全体の印象に注目する練習で正答率がほぼ2倍になりました。一方、英国の研究チームによる約5分の練習では、一般の参加者は練習後も偶然と変わらない水準でした。
AIの声も、練習すれば聞き分けられる?
今の研究では難しいとされています。中国の30人の実験では、人の声とAIで作った声を約12分聞き比べる練習をしても、聞き分けの成績はほとんど上がりませんでした。声だけで本人かどうかを決めず、別の方法で確かめるのが無難です。
「AIっぽい」と思った写真は、偽物と言っていい?
それだけで決めないほうが安全です。コツを読んだ人は本物の見出しも信じにくくなっており、見た目の印象だけで「偽物だ」と言うと、本物を疑う間違いにつながります。最初に出した人や、別の報道を確かめてから判断します。
出典
- Guo S, Swire-Thompson B, Hu X (2025). Specific media literacy tips improve AI-generated visual misinformation discernment. Cognitive Research: Principles and Implications, 10(1), 38. https://doi.org/10.1186/s41235-025-00648-z
- Dawel A, George T, Mah EY, Dunn JD, Sutherland CAM, Argument N, Tanaka JW (2026). Training humans to detect AI-generated faces. Proceedings of the National Academy of Sciences, 123(27), e2602122123. https://doi.org/10.1073/pnas.2602122123
- Gray KLH, Davis JP, Bunce C, Noyes E, Ritchie KL (2025). Training human super-recognizers' detection and discrimination of AI-generated faces. Royal Society Open Science, 12(11), 250921. https://doi.org/10.1098/rsos.250921
- Yang J, Jiang H, Bai Y, Ni G, Teng X (2026). Short-Term Perceptual Training Modulates Neural Responses to Deepfake Speech But Does Not Improve Behavioral Discrimination. eNeuro, 13(3), ENEURO.0300-25.2026. https://doi.org/10.1523/eneuro.0300-25.2026


