本物の写真を「AIの偽物だ」と言ってしまった。研究では、人は偽物にだまされるより本物を疑う間違いが多く、まずは自分の投稿を訂正する

SNSで見た写真に「これAIで作った偽物でしょ」と書いたら、撮った本人から「本物です」と返ってきた。そんなとき、気まずさと焦りで、どうしていいかわからなくなります。でも、これは珍しい失敗ではありません。研究では、人は偽物にだまされるより、本物を疑う間違いのほうが多めでした。大事なのは、そのあと早めに自分の言葉で正すことです。
3行でわかる
- 67本の論文をまとめた研究(194,438人)では、人は偽のニュースを本物と思う間違いより、本物のニュースを偽物と疑う間違いのほうが多めでした。
- 米英の4,976人の実験では、「AIで作った」と表示されただけで、本当で人が書いた見出しまで信じられにくくなりました。写真でも、「偽物」と言われた側に影響が残る可能性があります。
- 直後にやることは3つです。自分の投稿に訂正を書き足すこと、相手に短く謝ること、判定ツールや見た目だけでAIと決めない習慣に切りかえることです。
01 結論から言うと本物をAIの偽物と言ってしまったら、どうする?
まず、自分の投稿に「本物でした、私の間違いです」と訂正を書き足し、相手に短く謝ります。消すだけでは、すでに見た人に訂正が届きません。ニュースの見出しの実験では、「AIで作った」という表示が本物の見出しの信頼まで下げていました。
AIの偽画像が話題になるほど、「これもAIでは」と疑いたくなるのは自然なことです。疑う気持ちそのものは、だまされないための大切な力です。
ただ、本物の写真に「偽物」と書くと、撮った人や写っている出来事への信頼を下げてしまいます。言われた側は、嘘つき扱いされたように感じることもあります。
間違えたこと自体より、そのあとの対応で受け取られ方が変わります。早めに、自分から、どこを間違えたかを書くのが基本です。
02 研究とデータでわかっていること本物を偽物と疑う間違いは、よくあること?
よくあることです。研究のまとめでは、人は偽物にだまされるより本物を疑う間違いのほうが多めでした。AIで作った画像の見分けは自信と当たり外れが一致しにくく、「AIで作った」という表示は本物の情報の信頼まで下げていました。
PfänderとAltay(2025)[1]
ニュースが本当か偽物かを判断してもらった67本の実験論文(参加者194,438人、40か国)をまとめました。人は全体としては本当と偽物を見分けられていました。間違えるときは、偽物を信じるより、本当のニュースを偽物と疑う方向に間違えることが多めでした。
著者らは、見分ける力を高めるには、偽物を信じる人を減らすより、本当の情報を受け入れる余地を広げるほうが大きいと書いています。
対象: 6大陸40か国の実験参加者 / 限界: ニュースの見出しの判断を調べたもので、SNSの写真やAIの画像を直接扱ったものではない。
AltayとGilardi(2024)[2]
米国と英国の4,976人に、ニュースの見出しを見せる2つの実験をしました。「AIで作った」と表示すると、見出しが本当でも偽物でも、人が書いたものでもAIが書いたものでも、正しいと思われにくくなり、共有したい気持ちも下がりました。
影響の大きさは、「偽物」と表示したときの約3分の1でした。人は「AIで作った」と聞くと、人の手がまったく入っていないと思いがちだったためです。
対象: ネットで参加した米国と英国の大人 / 限界: 文字の見出しを使った実験で、写真に「AIだ」とコメントされた場合を調べたものではない。
Högemannら(2025)[3]
ドイツ語を話す大人104人に、風景・建物・室内の画像50枚(本物25枚、AIで作ったもの25枚)を見分けてもらいました。AIの画像をAIだと当てられたのは63.7%でした。
答えるときの自信と、実際に当たっているかはあまり一致せず、経験のある人たちには自信過剰の可能性があると著者らは書いています。AIを使う経験や画像を編集する経験があっても、当たる割合に差は見られませんでした。
対象: 2025年4月にネットで参加したドイツ語話者 / 限界: 少人数で、研究者のつながりなどで集めた参加者。
Dobbsら(2026)[4]
米国の大人に、医師や政治家が間違った情報を話したという架空の話を読ませ、そのあとに訂正を見せる2つの実験をしました。訂正を見ると、どちらの話し手でも、誤った話を信じる気持ちは下がりました。
2つ目の実験では、間違いが「わざとだった」と示されたときに、話し手の信頼が最も大きく下がりました。
対象: ネットで参加した米国の大人 / 限界: 医師や政治家の架空の話で、SNSで他人の写真を疑った人の訂正を調べたものではない。
研究を、本物を偽物と言ってしまった場面に当てはめると、次のように整理できます。
| 起きたこと | 研究でわかったこと |
|---|---|
| 本物をAIの偽物と疑った | 人は本物を疑う方向に間違えることが多めだった[1] |
| 「見ればわかる」と思っていた | 自信と当たり外れは一致しにくく、経験のある人たちに自信過剰の可能性があった[3] |
| 写真の投稿者が困っている | 「AIで作った」という表示は本物の見出しの信頼も下げた[2] |
| 訂正すると自分の信頼が下がりそう | 信頼が最も下がったのは、間違いが「わざと」と示されたときだった[4] |
03 まだわかっていないこと訂正すれば、相手の写真の信頼は元に戻る?
本物の写真を「AIの偽物」と言ったあと、訂正や謝罪でその写真の信頼がどこまで戻るかを調べた研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。訂正の効き方の多くは、文字のニュースの実験でわかっていることです。
- 写真や動画への「AIだ」というコメントが、見た人の判断をどのくらい変えるかを直接調べた研究は見つかっていません。
- 紹介した研究は、米国・英国・ドイツ語圏などのものです。日本のSNSで同じ結果になるかはわかっていません。
- 謝り方や訂正の書き方によって、相手との関係の戻り方がどう違うかも、はっきりしていません。
04 今日からできること気づいた直後に、何をすればいい?
直後にやるのは、自分の投稿に訂正を書き足すこと、相手に短く謝ること、次から見た目や判定ツールだけでAIと書かないと決めることの3つです。どれもお金はかからず、最初の2つは今日のうちに10分ほどでできます。
自分の投稿に「本物でした、私の間違いです」と書き足す
元の投稿への返信や引用で、何を間違えたかを1〜2文で書きます。すぐ消すと、すでに見た人に訂正が届きません。訂正を出したあとで元の投稿を消すかどうかを決めます。訂正の出し方は「AIの偽画像や動画を本物と思って拡散してしまった」も参考になります。
目安 5分ほど、気づいたその日に
相手に短く謝り、どう間違えたかを伝える
「見た目でAIだと思い込んでしまいました。本物でした。失礼な書き方をしてすみません」のように、言い訳を重ねずに伝えます。研究では、間違いが「わざと」と受け取られたときに信頼が最も下がっていました。思い込みで間違えたことを、そのまま書くほうが伝わりやすいと考えられます。
目安 5分ほど
次からは「AIだ」と書く前に、出どころを1つ確かめる
見た目や判定ツールの結果だけで決めず、撮った人や最初に出した人、同じ出来事を伝える報道があるかを見ます。わからないときは「AIかどうか確かめられなかった」と書くか、何も書かずにおきます。AIの絵だと疑われた側の対応は「自分で描いた絵を「AIでしょ」と疑われた」にまとめています。
目安 1回1〜2分
相手から強く削除や謝罪を求められたり、法的な話が出てきたりしたときは、一人で判断せず、法律の専門家や公的な相談窓口に相談します。疑いすぎて何も信じられなくなったと感じたら「偽情報やディープフェイクが気になって、何も信じられなくなった」も読んでみてください。
05よくある質問
本物の写真をAIだと言ってしまった投稿は、消せば済む?
消すだけでは不十分なことが多いです。すでに見た人には「本物だった」ことが伝わらないためです。先に返信や引用で「本物でした、私の間違いです」と訂正を書き足し、そのあとで元の投稿を消すかどうかを決めます。
AIの画像かどうかは、見ればわかるものじゃないの?
見た目だけで確実に見分けるのは難しいです。ドイツ語話者104人の実験では、風景・建物・室内のAI画像をAIだと当てられたのは63.7%で、答えの自信と当たり外れはあまり一致しませんでした。経験のある人たちには自信過剰の可能性も見られました。
AI判定ツールで「AIの可能性が高い」と出たら、AIと書いていい?
判定ツールの結果だけで「AIだ」と書くのは避けたほうが安全です。判定ツールは人の作品をAIと誤ることがあり、その研究は「自分で描いた絵を「AIでしょ」と疑われた」の記事で紹介しています。撮った人や最初に出した人、同じ出来事を伝える報道など、出どころを確かめられないときは「確かめられなかった」と書くにとどめます。
訂正したら、自分が信用されなくなりそうでこわい。
米国の実験では、話し手の信頼が最も大きく下がったのは、間違いが「わざとだった」と示されたときでした。思い込みで間違えたことを、自分から早めに正直に書くほうが、隠したり言い訳したりするより受け取られやすいと考えられます。
出典
- Pfänder J, Altay S (2025). Spotting false news and doubting true news: a systematic review and meta-analysis of news judgements. Nature Human Behaviour, 9(4), 688-699. https://doi.org/10.1038/s41562-024-02086-1
- Altay S, Gilardi F (2024). People are skeptical of headlines labeled as AI-generated, even if true or human-made, because they assume full AI automation. PNAS Nexus, 3(10), pgae403. https://doi.org/10.1093/pnasnexus/pgae403
- Högemann M, Betke J, Thomas O (2025). What you see is not what you get anymore: a mixed-methods approach on human perception of AI-generated images. Frontiers in Artificial Intelligence, 8, 1707336. https://doi.org/10.3389/frai.2025.1707336
- Dobbs M, Butler LH, Swire-Thompson B (2026). The differential consequences of correcting misinformation for high and low credibility sources. Scientific Reports, 16, 16044. https://doi.org/10.1038/s41598-026-42329-x


