AIを使う同級生ばかり評価が高く見えて、勉強のやる気がなくなった。研究では、AIで練習の点が上がった高校生が、AIなしの試験では17%低く、立て直しは「ひとりで解けるか」を物差しにすることから

自分は時間をかけて課題をやったのに、AIを使った同級生のほうが点が高い。そんなことが続くと、まじめにやるのがばからしく感じても不思議ではありません。ただ研究では、AIで上がった課題の点と、自分ひとりで解ける力は、同じではないことがわかっています。やる気を立て直すために、物差しの持ち方と、次の一歩を整理します。
3行でわかる
- トルコの高校生約1,000人の実験では、答えを聞けるAIで練習した組は練習の点が48%上がりましたが、AIなしの試験では、AIを使わなかった組より17%低くなりました。
- AIを使うこと自体が悪いのではありません。ヒントだけを出すAIで練習した組は、試験の点が下がりませんでした。差を分けたのは使い方です。
- 立て直しは、物差しを「課題の点」から「何も見ずに解けるか」に戻すこと、評価の仕方を先生に聞くこと、使うならヒント役にすることから始められます。
01 結論から言うとAIを使う同級生の点が高いのは、実力の差?
AIを使った課題の点は、そのまま実力の差とは限りません。高校生の実験では、答えまで出すAIで練習の点が上がった組が、AIなしの試験ではAIを使わなかった組より点が低くなりました。自分の努力が無駄になったわけではありません。
課題の点は、その場でAIに頼れる条件のもとでの結果です。テストや入試、仕事のように、AIを使えない場面や、AIの答えを自分で確かめる場面では、ひとりで考えた量がものを言います。
だから「AIを使った人のほうが評価が高い」と感じたときは、同じ物差しで比べていないかもしれない、と一度立ち止まる価値があります。比べて落ち込む気持ちそのものは自然な反応です。そのうえで、自分が伸ばしたい力を測る物差しを、自分の手元に取り戻すことが立て直しの出発点になります。
逆に、AIで課題を済ませてしまって後ろめたい側の立て直しは、AIで宿題を済ませてしまって、後ろめたいで整理しています。
02 研究とデータでわかっていることAIで上がった点は、AIなしでも残る?
答えをそのまま聞けるAIで練習した高校生は、練習の点が48%上がったのに、AIなしの試験ではAIを使わなかった組より17%低くなりました。ヒントだけを出すAIでは、試験の点は下がりませんでした。
Bastaniら(2025) [1]
トルコの高校で、数学の復習の時間に、クラスごとに3つの組に分けました。ふつうのチャットのように答えまで出すAIを使う組、先生が用意したヒントだけを出し答えは教えないAIを使う組、教科書とノートだけの組です。練習問題の点は、答えまで出すAIの組で48%、ヒントのAIの組で127%上がりました。ところが、その後にAIなしで受けた試験では、答えまで出すAIの組が、AIを使わなかった組より17%低くなりました。ヒントのAIの組は、AIを使わなかった組と差がありませんでした。
対象: トルコの1つの高校の9〜11年生、約50クラス・1,000人近く。4回の90分の授業 / 限界: 数学だけの、1つの学校の結果です。作文など答えが1つでない科目に当てはまるかはわかりません。
同じ研究では、答えまで出すAIの組の生徒は、自分の試験の出来や学んだ量が落ちたとは感じていませんでした。AIの答えを写していると、学べていないことに本人が気づきにくいのです。さらに、このAIが練習問題に正しく答えたのは平均51%で、42%は考え方の誤りでした。AIで出した点の高さは、答えの正しさも、本人の理解も保証しません。
Fanら(2026) [2]
大学などの高等教育で、生成AIを学習に使った36件の研究(参加者7,229人、132の効果)をまとめました。AIを使った学習は、平均すると学習の成果を中くらいに高めていました(g=0.499)。効果が最も大きかったのは、仲間と協力して学ぶ形(g=1.026)や、対面とオンラインを組み合わせる形(g=0.633)で使ったときでした。
対象: 高等教育の36件の研究 / 限界: AIを外したあとも力が残るかは、このまとめからはわかりません。中学生・高校生の結果ではありません。
つまり、AIを使えば必ず力が落ちるわけでも、必ず伸びるわけでもありません。答えをもらうか、考える手助けにするか、という使い方で結果が分かれます。
Almailabi(2026) [3]
勉強で人と比べがちな学生ほど、勉強への不安が強く、わからないときに先生や友人へ助けを求めることが少ない傾向がありました。不安が助けを求めにくくする関係は、「自分はやればできる」という感覚が強い学生では弱まっていました。
対象: サウジアラビアの2つの大学の学部生218人のオンライン調査 / 限界: 1回の調査で、比べることが不安の原因だとは言えません。AIを使う同級生との比べ方を直接調べたものでもありません。
比べて苦しくなると、先生に聞く、友人と話すといった、立て直しに役立つ行動が減りやすい、ということです。やる気が落ちたときほど、ひとりで抱え込まない工夫が意味を持ちます。
03 まだわかっていないこと日本の学校の評価でも、同じことが起きる?
日本の中学・高校で、AIを使う同級生との比べ方がやる気にどう響くかを調べた研究は、今回の調査では見つかりませんでした。ここでの数字は、トルコの高校の数学と、海外の大学の研究のものです。
- AIを使った課題の点と、AIなしの試験の点の差が、作文や英語などほかの教科でも同じように出るかは、まだ確かめられていません。
- AIの性能は年々変わります。実験は2023年秋のもので、今のAIで同じ差が出るかはわかりません。
- AIを使う同級生と比べて、やる気がどれくらい下がるのか、どうすれば戻るのかを直接調べた研究は、ほとんどありません。
- 学校が評価の仕方を変えたとき(教室での記述や口頭の説明を増やすなど)に、こうした不公平感が減るかもわかっていません。
04 今日からできることやる気を立て直すには、何から始める?
立て直しは、物差しを「何も見ずに解けるか」に戻すことから始めます。次に、評価の仕方とAIのルールを先生に聞き、AIを使うなら答えではなくヒントを聞く形にします。
「何も見ずに解けるか」を自分の物差しにする
週に1回、教科書もAIも閉じて、最近習った問題を数問解きます。解けた数を記録すると、課題の点とは別に、自分の力が伸びているかが見えます。実験で差がついたのも、この「何も見ずに解く」場面でした。
目安 週1回・10分
評価の仕方とAIのルールを、先生に聞く
「この課題でAIはどこまで使っていいですか」「成績はどの課題やテストで決まりますか」と聞きます。ルールがはっきりすれば、比べる相手が同じ条件かどうかもわかります。比べて不安なときほど、聞くことが立て直しの糸口になります。
目安 5分
AIを使うなら、「答え」ではなく「ヒント」を聞く
使ってよい授業では、「答えは言わずに、最初の一歩のヒントだけ教えて」と頼み、最後は自分で解きます。ヒントだけを出すAIで練習した組は、AIなしの試験でも点が下がりませんでした。AIの答えは間違うこともあるので、自分の答えと照らし合わせる使い方にします。
目安 1問ごとに1回
友人と「説明し合う」時間をつくる
わからなかった問題を、友人と口で説明し合います。研究のまとめでは、AIも仲間と協力して学ぶ形で使ったときに効果が大きくなっていました。比べる相手だった同級生が、一緒に学ぶ相手に変わります。
目安 週1回・15分
授業でAIをどこまで使ってよいかの確かめ方は授業でAIをどこまで使っていいか、先生と考えがずれていないか不安で、学校の決まりの基本はレポートや宿題にAIを使ったら不正?で整理しています。
05よくある質問
AIを使う同級生のほうが成績がいいのは、ずるい?
AIを使ってよいかは授業ごとのルールで決まるため、ずるいかどうかは一概に言えません。ただ、AIで上がった課題の点が、そのまま実力を表すとは限りません。トルコの高校の実験では、答えを聞けるAIで練習した組は、練習の点が48%上がった一方、AIなしの試験では、AIを使わなかった組より17%低くなりました。
自分もAIを使わないと、置いていかれる?
使い方しだいです。大学生などの36件の研究のまとめでは、AIを使った学習は平均すると学習の成果を中くらいに高めていました。一方、答えをそのまま聞くAIで練習した高校生は、AIなしの試験で成績が下がりました。使うなら、答えではなくヒントを聞き、最後は自分で解く形にします。
やる気がなくなったことを、先生に相談してもいい?
相談してかまいません。評価の仕方やAIのルールを聞くことは、勉強の正当な質問です。サウジアラビアの大学生218人の調査では、人と比べがちな学生ほど勉強の不安が強く、先生や友人に助けを求めることが少ない傾向がありました。比べて苦しいときほど、聞くことが立て直しの糸口になります。
出典
- Bastani H, Bastani O, Sungu A, Ge H, Kabakcı Ö, Mariman R (2025). Generative AI without guardrails can harm learning: Evidence from high school mathematics. Proceedings of the National Academy of Sciences, 122(26). https://doi.org/10.1073/pnas.2422633122
- Fan C, Ke L, Chen Z, Lv P (2026). Exploring the effect of GenAI on learning outcomes in higher education: a three-level meta-analysis. Frontiers in Psychology, 17. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1758670
- Almailabi BS (2026). Academic social comparison orientation and adaptive academic help-seeking among university students: academic anxiety as a mediator and academic self-efficacy as a moderator. Frontiers in Psychology, 17. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1872436


