AIの導入で負担が重なって休職した。職場に戻るのが不安。研究では、職場と連携した支援で復職が進みやすく、上司の支えや短い時間から戻る形が長続きと結びついていた

AIの導入で仕事が変わり、負担が重なって休職した。体調は少しずつ戻ってきたけれど、あの職場に戻れるのか、また同じことにならないか不安になる。そう感じる人は少なくありません。研究では、職場と連携しながら戻る準備をした人ほど復職が進みやすく、上司の支えや短い時間から戻る形が、戻ったあとの長続きと結びついていました。この記事では、復職を考え始めた時期にできることを、研究から順に整理します。
3行でわかる
- 心の不調で休んだ人の多くは、時間をかけて仕事に戻っています。仕事に焦点を当てた支援を受けた人では、支援の終わりに56%、その後の追跡で87%が仕事に戻っていました。
- 戻ったあとも続けて働けた人には、上司の支え、短い時間から戻る形、「戻れそうだ」という見通しが多く見られました。
- 今できるのは「主治医と復職の段階を話す」「AIで変わった仕事の中身を職場に確かめる」「短い時間から戻れるか相談する」の3つです。
01 結論から言うとAIの負担で休職したら、元の職場に戻れる?
戻れる人は多いと考えられます。心の不調で休んだ人の研究では、多くが時間をかけて仕事に戻っていました。ただ、AIの導入が原因で休んだ人に限った研究はまだありません。
休職は、つまずきではなく、回復のための期間です。日本の自治体職員の記録では、心の不調による90日以上の休職は平均434日ほどで、体の病気より長くかかっていました。時間がかかること自体は、珍しくありません。
一方で、AIの導入で負担が重くなった職場に、何も変わらないまま戻るのは不安なものです。研究で長続きと結びついていたのは、本人の頑張りだけでなく、職場の側の支えや戻り方の工夫でした。戻る前に職場と話しておくことには意味があります。
休職中の収入や制度についてはAIの導入で仕事がつらく、休みたいときの記事で、戻ったあと担当が変わったときのなじみ方は新しい仕事になじめないときの記事で整理しています。
02 研究とデータでわかっていること復職がうまくいく人には、何がそろっていた?
仕事に戻ることを治療や支援の中に組み込み、職場と連携した人ほど、復職が進みやすい傾向がありました。戻ったあとも続けて働けた人には、上司の支え、短い時間から戻る形、戻れるという見通しが多く見られました。
Finnesら / BMC Psychology(2026)[1]
心の不調(うつ・不安・ストレスによる不調など)で休んでいる人に、仕事に戻ることを組み込んだ認知行動療法(考え方と行動を整える心理療法)を行った研究をまとめました。仕事に戻った人は、支援の終わりに56%、その後の追跡で87%でした。ほかの支援と比べて、フルタイムで戻れる見込みが高く、症状の改善の差は小さいものの、はっきりありました。
対象: 24件の研究・3,279人 / 限界: 研究ごとに「復職」の定義や分析の方法がばらばらで、著者らも結果の比べにくさを指摘している。
Brämbergら / International Archives of Occupational and Environmental Health(2024)[2]
仕事や職場に働きかける支援の効果を、ランダム化比較試験に絞って調べました。仕事に焦点を当てた認知行動療法や、医療職と復職の担当者がチームで支える支援では、通常の支援より復職が多いか早い結果でした。職場が関わる支援は、復職の見込みを高める可能性がある、とまとめています。
対象: 2015〜2021年に発表された8件のランダム化比較試験(軽度〜中等度のうつ・不安・適応障害などで休職中の18〜64歳) / 限界: 研究の確かさは「低い」と評価されている。
Muntanelli・Silva-Junior / Revista Brasileira de Medicina do Trabalho(2025)[3]
心の不調で休んだあと、少なくとも1か月は再び休まずに働き続けられた人の特徴を調べた研究をまとめました。続けられた人には、休職についての前向きな見通し、「自分は戻れる」という自信、上司の支え、休職が長引いたときに知らせる仕組み、短い時間から戻る部分的な休職が多く見られました。症状が続いていること、休職が長いこと、仕事の負担がきついことは、続けにくさと結びついていました。
対象: 条件を満たした8件の研究 / 限界: どれも「結びつき」を見た研究で、上司の支えや短い時間での復帰が原因で長続きしたとまでは言えない。
Yamashitaら / Frontiers in Psychiatry(2022)[4]
大分大学病院で、うつ病などの人が平日の日中に通う復職支援プログラム(リワーク)の参加者を追いました。休職中だった105人のうち89人(84.8%)が職場に戻りました。仕事に就いていなかった23人では、新しい仕事に就いたのは5人(21.7%)で、休職中の人のほうが効果が出やすい結果でした。
対象: 2017〜2020年にプログラムに参加した128人 / 限界: 比べる組のない1つの病院の記録で、プログラムの効果そのものとは言い切れない。
Iwasakiら / PCN Reports(2025)[5]
日本の自治体職員で、90日以上休職した人の記録を調べました。心の不調による休職は平均433.9日で、体の病気の325.4日より長くなっていました。休職前のストレスチェックの仕事のストレスの点数と、心の不調による休職の長さには、はっきりした結びつきは見られませんでした。
対象: 2011〜2022年に90日以上休職した20〜60歳の1,175人(心の不調845人・体の病気330人) / 限界: 1つの自治体の公務員の記録で、民間企業や短い休職には当てはまらない可能性がある。
03 まだわかっていないことAIが原因の休職でも、同じことが言える?
まだわかっていません。AIの導入による負担で休職した人の復職を追った研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。ここで紹介した結果は、心の不調で休んだ人全般の研究からの推測です。
- AIの導入で仕事の中身が変わった職場に戻るとき、元の仕事に戻るのと、新しい担当に移るのとでどちらが長続きしやすいかは、研究がありません。
- 短い時間から戻る形や上司の支えは、長続きと結びついていましたが、それが原因かどうかは確かめられていません。もともと回復が進んでいた人がその形を選べた可能性もあります。
- 日本の研究は少なく、復職支援プログラムの効果を、比べる組を置いて確かめた研究はまだ限られています。
04 今日からできること復職を考え始めたら、何から準備する?
主治医と復職の段階を話し、AIで変わった仕事の中身を職場に確かめ、短い時間から戻れる仕組みがあるかを相談します。戻ったあとは、最初の1か月の様子を記録しておきます。
主治医に、仕事に戻る準備の段階を聞く
戻る時期は、主治医と会社が判断します。自分で決めず、「どのくらい回復したら、どんな準備から始めるか」を診察で聞いておきます。通える範囲に復職支援プログラム(リワーク)があるかも、このとき聞けます。
目安 次の診察で5分
AIで変わった仕事の中身を、職場に確かめる
休んでいる間にAIの使い方や担当が変わっていないか、戻ったら何を任されるのかを、上司や人事に聞きます。負担が重くなった原因(確認作業の量、AIで増えた業務など)が、今どうなっているかも確かめます。
目安 15分の面談か連絡を1回
短い時間や軽い仕事から戻れるか、相談する
会社の規則によっては、短い時間の勤務や、試しに出社する仕組みがあります。研究では、短い時間から戻る形が長続きと結びついていました。使える仕組みがあるか、就業規則や人事に確かめます。
目安 就業規則を読む30分
戻ってからの1か月、週に1回ふり返る
眠り、疲れ、仕事の量を週に1回メモします。増えてきた負担に早めに気づけば、上司や産業医に「どこを減らしたいか」を具体的に伝えられます。研究で長続きの目安とされたのも、戻ってから1か月でした。
目安 週1回・5分
職場の産業医や保健師、人事の担当者に、復職の進め方を相談できます。社外では、各都道府県の労働局にある総合労働相談コーナーで、休職や復職の扱いについて無料で相談できます。
05よくある質問
休職してから復職するまで、どのくらいかかる?
人によって大きく違います。日本の自治体職員の記録では、心の不調による90日以上の休職は平均433.9日で、体の病気の325.4日より長くかかっていました。戻る時期は、主治医と会社が判断します。焦って日付を決めるより、主治医と準備の段階を確かめながら進めるのが基本です。
復職したあと、また休むことにならないか心配。
心配になるのは自然です。研究のまとめでは、戻ったあとも1か月以上続けて働けた人には、上司の支え、短い時間から戻る部分的な休職、「自分は戻れる」という自信が多く見られました。症状が続いていることや仕事の負担がきついことは、続けにくさと結びついていました。戻る前に仕事の量や中身を職場と確かめておくことが手がかりになります。
リワーク(復職支援プログラム)は受けたほうがいい?
受けるかどうかは主治医と相談して決めます。大分大学病院のリワークの記録では、休職中だった参加者105人のうち84.8%が職場に戻っていました。ただし比べる組のない1つの病院の記録で、プログラムそのものの効果とは言い切れません。
AIの導入が原因で休んだことを、職場に伝えるべき?
伝えるかどうかは本人が決めてよいことです。ただ、AIの確認作業が増えた、担当が急に変わったなど、負担の中身を具体的に伝えておくと、戻ったあとの仕事の量を調整する話がしやすくなります。研究でも、上司の支えは戻ったあとの長続きと結びついていました。
気分の落ち込みや眠れない状態がぶり返したときは、無理に予定を進めず、主治医や、こころの健康相談統一ダイヤルなどの公的な相談窓口に相談できます。
出典
- Finnes A, Johansson M, Bernhardtz R, Öst LG (2026). Work-focused cognitive behavioural therapy for common mental disorders: a systematic review and meta-analysis. BMC Psychology, 14(1), 1374. https://doi.org/10.1186/s40359-026-05648-2
- Brämberg E, Åhsberg E, Fahlström G, Furberg E, Gornitzki C, Ringborg A, Thoursie PS (2024). Effects of work-directed interventions on return-to-work in people on sick-leave for to common mental disorders—a systematic review. International Archives of Occupational and Environmental Health, 97(6), 597-619. https://doi.org/10.1007/s00420-024-02068-w
- Muntanelli BR, Silva-Junior JS (2025). Predictors of sustained return to work after sick leave due to mental disorders. Revista Brasileira de Medicina do Trabalho, 23(2), e20251360. https://doi.org/10.47626/1679-4435-2025-1360
- Yamashita H, Sakai A, Terao T (2022). Effects of a rework program in a university hospital and predictors of work restoration and maintenance in the participants. Frontiers in Psychiatry, 13, 944472. https://doi.org/10.3389/fpsyt.2022.944472
- Iwasaki S, Deguchi Y, Okura S, Maekubo K, Matsunaga A, Inoue K (2025). Impact of workplace factors on long-term sickness absence: A retrospective observational study comparing mental and physical illnesses. PCN Reports, 4(2), e70113. https://doi.org/10.1002/pcn5.70113


