子ども・学校

生徒のAI使用を見抜けず、教員として自信をなくした。研究では、大学の採点者も専門家もAIの文章を見分けきれておらず、立て直しは「一人で見抜く」役割を手放すことから

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わかっている度 ★★☆ 中研究3本を整理
誰もいない教室の机
Photo: Martin Kraft / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

あとになって、ある生徒の課題がAIで書かれていたとわかった。採点したときは何も気づかず、むしろ良い評価をつけていた。教員としての目に自信がなくなった、という先生は少なくありません。研究を見るかぎり、それはあなた一人の力不足とは言いにくい出来事です。立て直しは、自分を責めることより「見抜く」役割を一人で抱えないことから始められます。

3行でわかる

  1. イギリスの大学の試験では、AIだけで書いた答案63本の94%が採点者に気づかれず、採点者のほぼ全員がAIの問題を知っていた。
  2. 医学の研究者4人も、AIの要約の32%を本物と判断し、本物の14%をAIと誤っていた。学生とAIの文章を2つ並べて選ぶ形でも、専門家が当てたのは70%だった。
  3. 見抜けなかった経験は、確かめ方を授業の中(その場で書く・口頭で説明する)に移し、同僚や学校と分け合うきっかけにできる。

01 結論から言うとAIを見抜けなかったのは、教員の力不足?

研究を見るかぎり、力不足とは言いにくいです。大学の採点者も専門家も、AIが書いた文章の多くを見分けられていませんでした。研究者は、見守りのない場で取り組む課題の出し方そのものの弱さを指摘しています。

自信をなくすのは、それだけ生徒の文章をきちんと読もうとしてきた証拠でもあります。ただ、読む力が高い人でも、1本の文章だけを見てAIかどうかを当てるのは難しいことが、研究でわかってきています。

イギリスの大学の実験を行った著者らは、論文の最後で、気づかずに採点した同僚に感謝を述べ、この結果は同僚の教育者としての仕事の質を反映するものではないと書いています。見抜けなかったことと、教員としての力量は別の話として扱われています。

02 研究とデータでわかっていること人はAIの文章をどのくらい見分けられる?

1本ずつ読む場面では、採点に慣れた人でも見分けきれていませんでした。大学の試験ではAIの答案の94%が気づかれず、研究者もAIの要約の約3分の1を本物と判断していました。2つを並べて選ぶ形でも3割は外れていました。

94%大学の試験に紛れ込ませたAIの答案63本のうち、採点で気づかれなかった割合(イギリス、2024年発表)
32%医学の研究者4人が、AIが書いた要約を本物と判断した割合(アメリカ、2023年発表)
70%学生の文章とAIの文章を並べて見せたとき、専門家35人がAIの側を当てた割合(ドイツ、2025年発表)

Scarfeら(2024)[1]

イギリスの大学の心理学科で、5つの科目の自宅受験のオンライン試験に、AIだけで書いた答案63本を、実在の学生の答案1,134本に紛れ込ませました。採点者は知らされていませんでした。AIの答案の94%は気づかれず、AIの答案の成績は、平均すると実際の学生より成績区分の半分ほど高くなっていました。あとの説明会では、採点した同僚のほぼ全員が、AIが試験の公正さをおびやかすことを知っていました。

対象: イギリスの1つの大学の心理学の試験(短い記述式と論述)、採点者は大学の教員 / 限界: AIの文章を手直しせずに出した実験で、1つの大学・1つの分野の結果。中学や高校の先生、日本語の文章にそのまま当てはまるかはわからない。

AIの問題を知っていた人たちでも、気づけたのはごく一部でした。「自分が油断していたから」とは言い切れないことを示しています。

Gaoら(2023)[2]

医学雑誌の本物の要約(論文の概要)50本と、AIに書かせた要約50本を混ぜ、研究チームの4人に見分けてもらいました。AIの要約の68%は正しく見抜けましたが、32%は本物と判断し、本物の要約の14%をAIと誤りました。4人は「見分けるのは意外なほど難しかった」と述べています。

対象: アメリカの研究チームの4人(医学の研究に携わる人) / 限界: 人数が少なく、AIの文章が混ざっていると知らされたうえでの判断。2022年12月版のAIを使った結果。

Doruら(2025)[3]

ドイツで、医学の専門家22人と人文学の専門家13人に、医学生が書いたドイツ語の文章とAIの文章を2つ並べて見せ、どちらがAIかを選んでもらいました。69回の判断のうち48回(70%)で正しくAIの側を選べました。手がかりになったのは、同じことの繰り返しや、話のつながりなど文体の特徴でした。

対象: ドイツの専門家35人(2023年5〜8月、AIは2023年3月版) / 限界: 2つを並べて選ぶ形なので、1本だけを読む実際の採点より易しい。著者らも、比べる相手なしに1本を評価する場面の難しさを課題に挙げている。

3つの研究を合わせると、文章を読んでAIかどうかを当てるのは、読み慣れた人でも難しいことがうかがえます。2つを並べて選ぶ形でも3割ほどは外れており、著者らは、比べる相手なしに1本を評価する場面の難しさを課題に挙げていました。文章の見た目だけで決めつけるのは、生徒を誤って疑うおそれもあります。

03 まだわかっていないこと見抜けなかった先生の心の負担は?

AIを見抜けなかった経験が、先生の自信や仕事の負担にどう影響するかを調べた研究は、まだほとんど見つかっていません。研究の多くは大学の場面でした。

  • 見抜けなかった経験が先生の自信にどう影響し、どう回復するかを調べた研究は見つかっていません。
  • 上の研究は大学や研究者が対象で、中学・高校の先生や日本語の課題でも同じかはわかっていません。
  • AIは年々変わるため、2023〜2024年の結果が今のAIにそのまま当てはまるかはわかりません。

04 今日からできること自信を立て直すために、何から始める?

まず「見抜けなかった」を自分の評価から切り離し、確かめる場面を授業の中(その場で書く・口頭で説明する)に移します。一人で抱えず、同僚や学校のルールづくりと分け合います。

1

「見抜けなかった」を事実として書き分ける

起きたこと、そのとき手元にあった情報、今わかったことを3行で書きます。「1本の文章だけで判断する場面だった」と書けると、自分の力量の問題と切り分けやすくなります。

目安 5分

2

過去の課題を、さかのぼって疑い直さない

不安から過去の提出物を読み直して疑い出すと、文章の印象だけで生徒を誤って疑うおそれがあります。気になることは、これからの課題の出し方で確かめます。

目安 今日から

3

確かめる場面を、授業の中に1つ作る

提出物について2〜3分で説明してもらう、授業中に短く書いてもらうなど、本人の考えを直接聞ける場面を1つ足します。疑うためでなく、学びを確かめる場として伝えます。課題の設計は生徒がAIを使った課題の採点に迷うにまとめています。

目安 1つの課題につき1回

4

同僚と、経験を共有する

「気づかなかった」経験を学年や教科の会議で共有し、学校としてのルールや確かめ方を一緒に考えます。研究の結果を見せると、個人の失敗ではなく共通の課題として話しやすくなります。

目安 会議で10分

5

判定ツールの数字だけで決めない

自信をなくすと、判定ツールに頼りたくなります。ただ、判定ツールは自分で書いた文章もAI製と誤ることがあります(AI判定ツールで「AIが書いた」と言われた)。数字は手がかりの一つにとどめます。

目安 判定を使うたびに

気持ちの落ち込みが続いて眠れない、仕事に向かえない日が続くときは、一人で抱えず相談してください。こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)でも相談を受け付けています。

05よくある質問

AIで書かれた課題を、見抜くコツはある?

研究では、繰り返しの多さや話のつながりが手がかりになっていましたが、2つを並べて比べても3割ほどは外れていました。1本の文章の印象だけで決めると、生徒を誤って疑うおそれがあります。見抜くことに頼るより、授業の中で本人の考えを確かめる場面を作るのが一つの方法です。

気づかずに良い評価をつけた課題は、やり直すべき?

評価をどう扱うかは、学校の規程や管理職と相談して決めることで、この記事では判断できません。少なくとも、文章の印象だけで過去の提出物をさかのぼって疑うのは避け、事実がわかっている範囲で学校と相談します。

教員として、AIに負けたように感じてしまう。

そう感じるのは自然なことです。ただ、研究では大学の採点者や医学の研究者も見分けきれていませんでした。研究者は見守りのない課題の形の弱さを指摘しており、確かめ方を変えることで授業の手ごたえを取り戻すことはできます。

「子ども・学校」を順に読む
知る → 備える → 起きたとき → 立て直す(この記事)
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出典

  1. Scarfe P, Watcham K, Clarke A, Roesch E (2024). A real-world test of artificial intelligence infiltration of a university examinations system: A "Turing Test" case study. PLOS ONE, 19(6), e0305354. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0305354
  2. Gao CA, Howard FM, Markov NS, et al. (2023). Comparing scientific abstracts generated by ChatGPT to real abstracts with detectors and blinded human reviewers. npj Digital Medicine, 6, 75. https://doi.org/10.1038/s41746-023-00819-6
  3. Doru B, Maier C, Busse JS, et al. (2025). Detecting Artificial Intelligence-Generated Versus Human-Written Medical Student Essays: Semirandomized Controlled Study. JMIR Medical Education, 11, e62779. https://doi.org/10.2196/62779