スマートウォッチの睡眠スコアが悪くて、一日中だるく不安になった。研究では、悪い結果を伝えられただけで日中の調子が下がり、年配の人では機器が睡眠を1時間ほど短く出すこともあった

朝、スマートウォッチやアプリを開いたら、睡眠スコアが低い。深い睡眠が足りない。そう出た途端に体が重く感じて、一日中だるさと不安が抜けない。そんな経験は珍しくありません。研究では、悪い結果を伝えられただけで日中の調子を悪く感じることがわかっています。機器の数字は推定で、人によってずれもあります。まず数字と体の感じを分けて見直すことが、今日の一歩です。
3行でわかる
- 不眠に悩む63人の実験では、実際の睡眠と関係なく「悪い結果」を伝えられた組が、夕方に頭のさえを低く、眠気やだるさを強く感じていました。注意のテストの成績には差がありませんでした。
- 睡眠の機器やアプリは、体の動きや心拍などからアルゴリズムで推定した値です。56〜80歳の人では、睡眠時間を約46〜76分短く出す機器がありました。
- スコアが悪かった朝は、先に自分の感じを書き、1晩でなく数週間の傾向で見ます。眠れない状態が続くなら、記録を持って医療機関に相談できます。
01 結論から言うと睡眠スコアが悪い日は、本当に体調も悪い?
スコアが悪いことと、その日の体調が悪いことは、同じではありません。研究では、悪い結果を伝えられただけで、日中のだるさや眠気を強く感じていました。数字は推定なので、体の感じと分けて受け止め直すのが先です。
睡眠のスコアや「深い睡眠」の時間は、腕や指の機器が測った体の動き・心拍などから、アルゴリズムで推定した値です。眠っている間の脳波を測る病院の検査(睡眠ポリグラフ検査)とは仕組みが違います。
それでも、数字を見ると体の感じは動きます。研究者は、よい睡眠を完璧に取ろうとして機器の数字にとらわれる状態を「オーソムニア」と名づけ、注意を呼びかけています。病名ではなく、研究で使われている言葉です。
AIの判定で不安が残ったときの考え方は、AIに悩みを話したら「うつの可能性がある」と言われ、不安が消えないでも整理しています。睡眠の記録をAIに分析させる前の確認点は、スマートウォッチや健康アプリの記録を、AIに分析させても大丈夫?をご覧ください。
02 研究とデータでわかっていること睡眠の数字は、気分や体の感じをどう変える?
悪い結果を伝えられると、実際の睡眠と関係なく、日中のだるさを強く感じていました。利用者の調査でも、2割近くが「前より睡眠が心配になった」と答えています。機器の数字も、年配の人では1時間ほどずれることがありました。
Gavriloffら / Journal of Sleep Research(2018)[1]
不眠症の基準に当てはまる63人に、腕時計型の機器を着けて眠ってもらいました。翌朝、実際の睡眠とは関係なく、半分には睡眠の効率が「よかった」、半分には「悪かった」という結果を伝えました。悪い結果を伝えられた32人は、夕方に頭のさえを低く感じ、眠気やだるさを強く感じていました。よい結果の組は、朝から昼にかけて気分と頭のさえがより上がっていました。一方、注意の反応の速さを測るテストでは、2つの組に差がありませんでした。
対象: 不眠に悩む成人63人(無作為に割り当てた実験) / 限界: 1日だけの実験で、不眠のない人で同じになるかはわからない。
Baronら / Journal of Clinical Sleep Medicine(2017)[2]
機器の記録で「眠りが浅い」「睡眠が足りない」と見て、自分は不眠だと考えて受診する人が増えていると報告しました。患者の中には、病院の検査より機器の数字のほうが自分の感覚に合うと感じる人もいました。研究者は、完璧な睡眠を求めて数字にとらわれる状態を「オーソムニア」と呼び、機器の正確さの限界を伝えることが大切だとしています。
対象: 睡眠の診療に来た3人の事例報告 / 限界: 数人の事例で、どのくらいの人に起きるかはわからない。
Lundekvam Bergeら / Frontiers in Psychology(2026)[3]
ノルウェーの成人1,002人の調査で、46.0%が睡眠アプリや機器を使ったことがありました。影響を答えた利用者では、「自分の睡眠について多くを学べた」が48.1%でした。一方で「前より睡眠が心配になった」が17.8%、「睡眠のどこかがおかしいと思うようになった」が14.0%、「睡眠のことでストレスを感じた」が11.2%でした。不眠のある人ほど、悪い影響の点数が高くなっていました。
対象: ノルウェーの成人(回答率19.8%) / 限界: 本人の感じ方を聞いた調査で、アプリが原因かどうかはわからない。
Dionら / Journal of Medical Internet Research(2025)[4]
カナダの人口構成に合わせて集めた1,200人のうち、19.3%(231人)が睡眠を測る機器を使っていました。使う人の約45%は睡眠やストレスによい影響があったと答え、悪い影響は4.5%でした。ただ、使う人では、不安の症状が強いほど睡眠時間が短くなる関係が、使わない人より強く出ていました。
対象: 16〜88歳のカナダの人 / 限界: 一度きりの調査で、機器が不安を強めたのか、不安な人が機器を使うのかは区別できない。
Searlesら / Sleep Advances(2026)[5]
腕時計型・指輪型の機器と、寝具の近くに置く機器の計4機種を、自宅での睡眠ポリグラフ検査と1晩比べました。56〜80歳の19人では、4機種とも睡眠時間を検査より短く出し、その差は平均で約46〜76分でした(1機種は統計的にははっきりしない差)。深い睡眠の時間は、3機種で約72〜97分多く出ていました。研究者は、機器の値は年配の人で特にずれやすく、解釈には注意が必要だとしています。
対象: 19〜24歳13人と56〜80歳19人 / 限界: 1晩・少人数の比較で、機種やソフトの更新で結果は変わりうる。
03 まだわかっていないことスコアを見ないようにすれば、不安は減る?
まだ確かめられていません。悪い結果が感じ方を変えることは実験で示されていますが、「見る回数を減らす」「スコアを隠す」と不安が減るかを直接試した研究は、今回の調査では見つかりませんでした。
- 悪い結果を伝えた実験は、不眠に悩む人が対象の1日だけのものです。ふだんよく眠れている人や、何週間も見続けた場合の影響はわかっていません。
- 機器を使う人に不安や不眠が多い関係は、調査で見られています。ただ、機器が不安を生むのか、もともと不安な人が機器を使うのかは区別できていません。
- 睡眠を推定するアルゴリズムは、機種ごとに違い、更新で変わります。研究で調べた機種の結果が、手元の機器にそのまま当てはまるとは限りません。
- 日本の利用者を対象にした研究は、今回の調査では見つかりませんでした。
04 今日からできることスコアが悪かった朝、まず何をすればいい?
数字を見る前の自分の感じを書き、数字は「推定」として1晩でなく数週間の傾向で見ます。不安が強い間は見る回数を減らし、眠れない状態が続くなら記録を持って医療機関に相談します。
数字を見る前に、自分の感じを一言書く
起きたら、スコアを開く前に「よく眠れた/まあまあ/眠れなかった」と、今の体の重さを一言メモします。実験では、伝えられた結果しだいで感じ方が変わっていました。先に書いておくと、数字と自分の感覚を分けて見られます。
目安 毎朝30秒
1晩の数字でなく、2週間の傾向で見る
今日のスコアが悪くても、それだけで判断しません。2週間ほどの平均や、寝た時刻・起きた時刻の並びを見ます。特に「深い睡眠」の時間は、検査とのずれが大きく出やすい値です。
目安 週1回5分
不安が強い間は、朝に見るのをやめてみる
スコアを見るたびに気になるときは、記録は続けたまま、見るのを夕方に1回だけにするなど回数を減らします。不眠のある人ほど悪い影響を感じやすい傾向がありました。合わなければいつでも戻せます。
目安 まず1週間
眠れない日が続くなら、記録を持って相談する
寝つけない・夜中に何度も起きる状態が続き、日中の生活に困っているときは、医療機関に相談できます。機器の数字だけでなく、1のメモ(寝た時刻・起きた時刻・朝の感じ)を持っていくと、話が伝わりやすくなります。
目安 メモを1〜2週間分
05よくある質問
睡眠スコアが悪い日は、本当に体調も悪いの?
そうとは限りません。不眠に悩む63人の実験では、本当の睡眠と関係なく「悪い結果」を伝えられた組のほうが、夕方の頭のさえを低く、眠気やだるさを強く感じていました。一方で、注意の反応を測るテストの成績には差がありませんでした。数字が感じ方を動かしている可能性があります。
スマートウォッチの睡眠時間は、どのくらい正確?
機器と人によって違います。2026年の研究では、自宅で検査機器と同時に測ったところ、56〜80歳の人では睡眠時間を約46〜76分短く出す機器があり、深い睡眠を多く出す機器もありました。若い人では睡眠時間はより近い値でした。1晩の数字より、何週間かの傾向として見るほうが無難です。
睡眠スコアを見るのはやめたほうがいい?
やめるべきとは言えません。ノルウェーの調査では、利用者の約半数が「自分の睡眠について学べた」と答えていました。ただ、2割近くは「前より睡眠が心配になった」と答えており、不眠のある人ほど悪い影響を感じやすい傾向がありました。不安が強い時期だけ見る回数を減らす、という使い分けもできます。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
出典
- Gavriloff, D., Sheaves, B., Juss, A., Espie, C. A., Miller, C. B., & Kyle, S. D. (2018). Sham sleep feedback delivered via actigraphy biases daytime symptom reports in people with insomnia: Implications for insomnia disorder and wearable devices. Journal of Sleep Research, 27(6), e12726. https://doi.org/10.1111/jsr.12726
- Baron, K. G., Abbott, S., Jao, N., Manalo, N., & Mullen, R. (2017). Orthosomnia: Are Some Patients Taking the Quantified Self Too Far? Journal of Clinical Sleep Medicine, 13(2), 351-354. https://doi.org/10.5664/jcsm.6472
- Lundekvam Berge, H., Lundekvam, K. E., Waage, S., Bjorvatn, B., Pallesen, S., & Saxvig, I. W. (2026). Sleep in the age of technology: the use of sleep apps and perceived impact on sleep and sleep habits. Frontiers in Psychology, 17, 1726473. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1726473
- Dion, K., Porteous, M., Kendzerska, T., Nixon, A., Lee, E., de Zambotti, M., et al. (2025). Sleep, Health Care-Seeking Behaviors, and Perceptions Associated With the Use of Sleep Wearables in Canada: Results From a Nationally Representative Survey. Journal of Medical Internet Research, 27, e68816. https://doi.org/10.2196/68816
- Searles, M. E., Licata, A., Cucinotta, M., Kainec, K., & Spencer, R. M. C. (2026). Performance evaluation of consumer sleep-tracking wearables and nearables in healthy young and older adults. Sleep Advances, 7(1), zpag006. https://doi.org/10.1093/sleepadvances/zpag006


