仕事・キャリア

職場でAIを使っていないのは自分だけ?取り残されそうで不安。デンマークの約1万8,000人の調査では、仕事で使ったことがある人は41%で、使わない理由の多くは研修や職場の制限だった

約9分で読めます

わかっている度 ★★☆ 中研究3本を整理出典照合済み(2026-10-18)
窓辺の机に置かれたパソコンと電話
Photo: Palm Beach Police Department / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

周りがAIの話をしているのに、自分はまだ仕事でほとんど使っていない。このままでは置いていかれるのでは、と焦る人は少なくありません。けれど、働く人を大きく調べた研究を見ると、「みんな使っている」は実際より大きく見えやすいことがわかります。そして使わない理由の多くは、本人のやる気より、研修や職場のルールにありました。

3行でわかる

  1. デンマークの11職種・約1万8,000人の調査(2023〜24年)では、仕事で対話型AI(調べたのは1つのサービス)を使ったことがある人は41%、直近2週間に仕事で使った人は29%だった。
  2. 使わない理由で多かったのは「使うには研修が必要」と「勤め先が制限している」。仕事を失う・頼りきりになるという不安を理由に挙げた人は9%未満だった。
  3. 焦りの正体は「自分の力不足」とは限らない。職場で使ってよい範囲と、学べる機会があるかを確かめるところから始められる。

01 結論から言うとAIを使っていない人は、もう少数派?

少数派とは言えません。デンマークの調査では、AIの影響を受けやすい職種でも、仕事で使ったことがある人は41%でした。使っていない理由の多くは、研修の不足や職場の制限など、本人だけでは変えにくい事情でした。

ニュースやSNSでは、AIを使いこなす人の話が目立ちます。そのため「使っていないのは自分だけ」と感じやすくなります。けれど、働く人を広く調べた研究では、仕事で使っている人は半分に届いていませんでした。

もう一つわかったのは、「使えば時間が減りそう」と思っていても、使っていない人が多かったことです。理由として多かったのは、やり方を教わっていないことや、勤め先が使い方を制限していることでした。使っていないことは、能力ややる気の問題とは限りません。

02 研究とデータでわかっていること実際に、仕事でAIを使っている人はどのくらい?

デンマークでは影響を受けやすい職種でも仕事での利用経験は41%、アメリカの大人で毎日以上使う人は約1割でした。使う割合は職種、年齢、性別で大きく違い、使わない理由は研修と職場の制限が中心でした。

41%仕事で対話型AIのサービス(調べたのは1つ)を使ったことがある人(デンマークの11職種・約1万8,000人、2023年11月〜2024年1月)
29%同じ調査で、直近2週間に仕事で使った人
9%未満使わない理由に「仕事を失う・頼りきりになる不安」を挙げた人(時間を半分にできると考えながら使う予定がない人のうち)
10.3%生成AIを毎日以上使うと答えたアメリカの大人(2万847人、2025年4〜5月)

Humlum・Vestergaard(2025)[1]

デンマークで、AIの影響を受けやすい11職種(会計、カスタマーサポート、金融アドバイザー、人事、ITサポート、記者、法律職、マーケティング、事務、ソフトウェア開発、教員)の働き手に調査しました。調べた1つの対話型AIサービスを仕事で使ったことがある人は41%、直近2週間に仕事で使った人は29%でした。職種の差は大きく、マーケティングと記者では約64%、金融アドバイザーと会計では約18%でした。

対象: 10万人に案内し、有効回答は約1万8,000人。国の統計局の登録データと結びつけて分析 / 限界: 1つのAIサービスの利用を本人の回答で調べた、2023〜24年時点の結果。その後の広がりは反映していない。

同じ研究では、時間を半分にできると考えながら使う予定がない人に理由を聞いています。「使うには研修が必要」と「勤め先が制限している」が多く、「仕事を失う・頼りきりになる不安」を挙げた人は9%未満でした。勤め先の制限は、金融や法律など機密を扱う職種で多く挙がりました。研修が必要という答えは、一度でも使ったことがある人では28%少なくなっていました。

研究チームは、AIで時間がどれくらい減るかの専門家の見積もりを、ランダムに選んだ人に伝える実験もしました。見込みは変わりましたが、その後2週間の実際の利用は変わりませんでした。情報を知るだけでは使い始めにつながらず、研修や制限といった壁が残っていたと研究者は考えています。

Humlum・Vestergaard(2025)[1]

同じ職種の中で比べると、若い人や経験年数の短い人ほど使っていました。年齢が1歳上がるごとに0.7ポイント、経験が1年長いごとに0.6ポイント、仕事で使った割合が低くなっていました。女性は同じ職種の男性より16ポイント低く、同じ職場・似た仕事の人どうしで比べても12ポイントの差が残りました。

対象: 上と同じ調査 / 限界: 違いの理由は本人の回答から推測したもの。女性は研修の必要を、男性は勤め先の制限や機密を、理由に挙げる人が多かった。

ベテランほど使っていないのは、遅れているからとは限りません。同じ調査では、「経験のある人ほどAIで減る時間は小さい」と答えた割合は38%で、逆の答え(20%)の約2倍でした。経験を積んだ人には、AIで省ける部分がもともと少ないと感じられている可能性があります。

Perlisら(2026)[2]

アメリカの50州で18歳以上の2万847人に聞いたところ、生成AIを毎日以上使う人は10.3%でした。そのうち、仕事に使うと答えた人は48.0%でした。毎日以上使う人は、男性、若い人、学歴や収入の高い人、都市に住む人に多くなっていました。

対象: アメリカの18歳以上、2025年4〜5月のインターネット調査 / 限界: 確率で選んだ標本ではなく、重みづけで補正した調査。1回きりの調査で、使い方の変化は追っていない。

Guo・Wei(2025)[3]

中国の、仕事でAIを使っている45歳以上の働き手635人を調べました。自分の仕事にAIを取り入れている度合いが高いと答えた人ほど「自分の居場所や役割が脅かされる」感覚が少し強い傾向がありました。ただ、デジタル機器をうまく使える自信がある人では、その結びつきが弱くなっていました。

対象: 中国のさまざまな業種で働く45歳以上の635人 / 限界: 1回の自己回答の調査で、自信をつけると不安が減るという因果までは確かめていない。

3つの研究を合わせると、「みんなが使いこなしている」という見え方は実際より大きく、使い方の差は職種、職場のルール、研修の機会といった環境で大きく分かれていました。仕事そのものがどう変わるかは、AIに仕事を奪われるのは本当?で職業ごとの研究をまとめています。

03 まだわかっていないこと今使っていないと、将来不利になる?

まだわかっていません。使っていた人と使っていなかった人を何年も追い、昇進や収入がどう分かれたかを調べた研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。日本の働く人で同じ規模の調査も確認できていません。

  • デンマークの調査は2023〜24年、アメリカの調査は2025年の時点の数字です。利用は広がり続けているとみられ、今の割合はこれより高い可能性があります。
  • 使い始めた時期の違いが、その後の評価や収入の差につながるかを長く追った研究は、まだ見当たりません。
  • 日本の職場で、職種ごとにどのくらい使われているかを、同じ方法で調べた査読済みの研究は今回確認できませんでした。
  • 研修を受けると使い始める人が本当に増えるのか、それで仕事の成果が上がるのかは、直接比べた研究がまだ少ない状態です。

04 今日からできること取り残される不安に、何から手を打てばいい?

自分の職場でAIをどこまで使ってよいかを確かめ、学べる機会があるか聞き、1つの作業で短く試します。研究で多かった壁は「研修」と「職場の制限」なので、まずそこを確かめるのが近道です。

1

職場で使ってよい範囲を確かめる

勤め先にAIの利用ルールがあるか、使ってよいサービスと入れてはいけない情報は何かを、上司か担当部署に聞きます。ルールがない場合の聞き方は職場にAIを使うルールがないにまとめています。

目安 10分(メール1通)

2

学べる機会があるかを聞く

社内研修や、使い慣れた同僚に教わる時間をとれるかを相談します。研究では「研修が必要」が使わない理由の筆頭で、一度使った人ではその答えが減っていました。

目安 1回15分

3

ルールの範囲で、1つの作業だけ試す

個人情報や社外秘を含まない、自分で正しさを確かめられる作業(文章の言い換え、手順の整理など)を1つ選び、自分のやり方と比べます。結果は必ず自分で確かめます。確かめ方は仕事でAIに作らせた文章や資料、そのまま出して大丈夫?を参考にできます。

目安 1回20分、週1回

4

「使わない」と決めた作業も書き出しておく

経験があるから速くできる作業や、AIでは省けない作業もあります。どこに使い、どこに使わないかを1枚にまとめると、比べて焦る気持ちを具体的な判断に置きかえられます。

目安 15分

05よくある質問

AIを使っていない人はどのくらいいる?

デンマークのAIの影響を受けやすい11職種・約1万8,000人の調査(2023年11月〜2024年1月)では、仕事で使ったことがある人は41%で、残りの約6割は仕事で使ったことがありませんでした。アメリカの大人2万847人の調査(2025年)では、生成AIを毎日以上使う人は10.3%でした。どちらも調査した時点の数字で、今はもっと高い可能性があります。

年をとっていると、AIを使いこなせない?

年齢が高い人ほど使う割合は低い傾向がありましたが、それが「使いこなせない」ことを意味するとは言えません。デンマークの調査では、経験のある人ほどAIで減る時間は小さいと答える人が多く、省ける部分がもともと少ない可能性もあります。中国の45歳以上の調査では、デジタル機器を使う自信がある人ほど、AIで役割が脅かされる感覚と結びつきにくくなっていました。

会社がAIを禁止している。こっそり使ってもいい?

おすすめしません。デンマークの調査では、勤め先の制限は金融や法律など機密を扱う職種で多く挙がっていました。制限には情報を守る理由があることが多いため、使いたい作業があるなら、その作業に使ってよいかを上司か担当部署に確かめるのが先です。

AIを使えないと、仕事を失う?

研究からは言い切れません。仕事でAIを使っていた人と使っていなかった人を長く追い、仕事を失うかどうかを比べた研究は見つかりませんでした。デンマークの調査では、使わない理由に仕事を失う不安を挙げた人は9%未満で、多くの人が挙げたのは研修と職場の制限でした。

「仕事・キャリア」を順に読む
知る(この記事) → 備える → 起きたとき → 立て直す
この悩みのガイドを見る

出典

  1. Humlum, A., & Vestergaard, E. (2025). The unequal adoption of ChatGPT exacerbates existing inequalities among workers. Proceedings of the National Academy of Sciences, 122(1), e2414972121. https://doi.org/10.1073/pnas.2414972121
  2. Perlis, R. H., Gunning, F. M., Uslu, A. A., Santillana, M., Baum, M. A., Druckman, J. N., Ognyanova, K., & Lazer, D. (2026). Generative AI Use and Depressive Symptoms Among US Adults. JAMA Network Open, 9(1), e2554820. https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2025.54820
  3. Guo, Y., & Wei, L. (2025). AI technology adoption and intergenerational knowledge transfer among older employees. Frontiers in Psychology, 16, 1673730. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2025.1673730