顔写真だけで、AIに考え方や性格を見抜かれる?研究では政治的な考えの推測が偶然より当たったが、当たり方は弱く、写り方の影響だという批判も強い

「AIは顔写真を見るだけで、その人の考え方や性格がわかる」。そんな話を聞くと、SNSに載せた自分の写真が急に心配になります。研究を確かめると、顔写真から政治的な考えを偶然より高い割合で当てた結果は実際にあります。ただし当たり方は弱く、何を手がかりにしたのかにも強い批判があります。「見抜かれる」と怖がる前に、何がどこまでわかっているのかを整理します。
3行でわかる
- アメリカ・カナダ・イギリスの100万人超の顔写真を使った研究では、考えの違う2人の顔から、どちらがどちらかを72%当てました。でたらめでも50%当たる課題で、人が見分けた場合は、別の研究のまとめで約55%です。
- 表情や向きをそろえて撮った591人の写真では、当たり方は弱いもの(相関0.22)でした。研究者からは「頭の傾きなど写り方の違いを拾っただけでは」という批判が出ています。
- 顔から内面がはっきり読めるわけではありません。ただ、ネット上の写真や投稿から年齢や性別などが推測されることは多くの研究で確かめられています。公開する写真をしぼり、顔診断の結果を真に受けないのが現実的な守り方です。
01 結論から言うとAIは顔写真から考えや性格を見抜ける?
はっきり見抜けるわけではありません。研究では、顔写真から政治的な考えを偶然より高い割合で当てた結果がありますが、条件をそろえると当たり方は弱く、写り方の違いを拾っているだけだという批判も強くあります。
よく引用される「72%」という数字は、1人ずつの考えを当てた割合ではありません。考え方の違う2人の顔写真を並べて、どちらがどちらかを選ぶ課題での正解率です。でたらめに選んでも半分は当たるので、偶然よりは上でも、「見抜く」というほどの精度ではありません。
一方で、顔写真は隠しにくい情報です。研究者自身も、論文の中でプライバシーへの影響に注意を促しています。怖がりすぎず、軽く見すぎず、間の位置で受け止めるのが妥当です。SNSの投稿や「いいね」から推測される話は、SNSの投稿から、AIに性格や個人的なことを当てられる?で整理しています。
02 研究とデータでわかっていること顔写真から、どこまで当てられた?
SNSや出会い系サイトの顔写真では、考えの違う2人を見分ける正解率が72%でした。表情や向きをそろえた写真では当たり方が弱くなり、写り方の影響を指摘する批判も出ています。
Kosinski(2021)[1]
Facebookと出会い系サイトのプロフィール写真を、顔認識の仕組みで分析しました。考え方の違う2人の顔を並べたとき、どちらがリベラルでどちらが保守かを72%当て、別の研究でわかっている人の正解率(約55%)や100問の性格検査から推測した場合(66%)を上回りました。年齢・性別・人種の影響を除いても69%でした。手がかりを調べると、顔の向き(58%)や表情(57%)だけでも偶然より少し当たり、眼鏡やひげはほとんど手がかりになりませんでした(51〜52%)。
対象: アメリカ・カナダ・イギリスの108万5,795人の写真(本人が選んで載せた写真) / 限界: 写真は本人が選んだものなので、顔そのものではなく、写り方や身だしなみの違いを拾っている可能性があります。
Kosinskiら(2024)[2]
写り方の違いを除くため、591人の顔を研究室で、表情をなくし、向きや明るさをそろえて新たに撮影しました。それでも、人の判断(相関0.21)と顔認識の仕組み(0.22)のどちらも、政治的な考えをわずかに当てました。年齢・性別・人種の情報を加えると0.31でした。
対象: 591人(研究室で撮影)と、アメリカ・イギリス・カナダの政治家3,401人の写真 / 限界: 当たり方は弱く、1人ずつの考えを言い当てられる水準ではありません。
Andrewsら(2024)[3]
顔から内面を読もうとする機械学習の研究を、昔の人相学(顔つきで性格を判断する考え方)のくり返しだと批判した論文です。2024年の研究について、AIが重視した眉・鼻・口元・あごの形の違いは、頭が少し前に傾いているかどうかで説明できると指摘しました。撮影の条件をそろえても、頭の位置までは固定できていなかった可能性があるという指摘です。
対象: 顔から内面を推測した複数の研究の検討 / 限界: 新たにデータを集めて確かめた研究ではなく、方法についての批判です。
Hinds・Joinson(2018)[4]
ネット上の痕跡(投稿や閲覧の記録など)から、その人の属性を自動で推測した研究を集めて整理しました。2018年10月までの327本の研究で、14の属性が推測されていました。多く調べられていたのは、性別・年齢・住んでいる地域・政治的な考えでした。
対象: 327本の研究のまとめ / 限界: 研究ごとに方法や精度の測り方が違い、生活の中で同じ精度が出るとは限りません。
| よく聞く話 | 研究で確かめられたこと |
|---|---|
| AIは顔から考え方を見抜く | 2人のどちらかを選ぶ課題で72%(でたらめで50%)。1人ずつを言い当てる精度ではない [1] |
| 条件をそろえれば顔の形でわかる | 当たり方は相関0.22と弱い [2]。頭の傾きで説明できるという批判がある [3] |
| ネットの情報から属性は推測される | 性別・年齢・地域など14の属性で研究がある [4] |
03 まだわかっていないこと日本人の顔や、今のAIでも同じ?
日本人の顔写真で同じことを確かめた研究や、画像を読める最新の対話型AIで内面の推測を確かめた査読研究は、今回の調べでは見つかりませんでした。顔そのものが手がかりなのかも、まだ決着していません。
- 研究の対象はアメリカ・カナダ・イギリスで、「リベラルと保守」という分け方も海外のものです。日本でそのまま当てはまるかはわかりません。
- 当たった理由が顔の形なのか、表情・向き・身だしなみなのかは、研究者の間で意見が分かれています。
- 性格や本音など、政治的な考え以外の内面について、顔写真だけから当てられるかを確かめた研究はさらに少なく、結果も一致していません。
- 2021年と2024年の研究で使われたのは顔認識の専用の仕組みで、画像を読める対話型AIで同じ結果になるかは確かめられていません。
04 今日からできること顔写真から推測されるのが不安なときは?
顔から内面がはっきり読めるわけではないと知ったうえで、誰にでも見える場所に置く顔写真をしぼり、顔診断の結果を真に受けず、他人の写真で推測を試さないことが現実的な守り方です。
誰にでも見える顔写真を数えて、しぼる
SNSのプロフィール写真や昔の投稿のうち、誰でも見られる設定の顔写真を確かめます。必要のないものは公開範囲をせばめるか、顔が大きく写っていない写真に替えます。
目安 15分・年に1回
顔で内面を占う診断は、結果を真に受けない
「顔で性格がわかる」「本音がわかる」とうたう診断は、研究で確かめられた技術ではありません。顔写真を送る前に、保存や削除のルールを確かめます。送ってしまったときはAIの加工アプリに顔写真を送ってしまったの手順が使えます。
目安 送る前に3分
他人の顔写真で、内面の推測を試さない
家族や同僚、知らない人の写真をAIに入れて「どんな人か」を推測させると、本人の知らないところで決めつけを作ることになります。結果は根拠が弱く、人を判断する材料にしません。
目安 今日から
お店や施設のカメラで顔が登録されていないかが気になる場合は、顔認証やAIカメラで自分の顔が登録されている?で確かめ方をまとめています。
05よくある質問
AIは顔写真から性格や本音を見抜ける?
はっきり見抜けるとは言えません。研究では、顔写真から政治的な考えを偶然より高い割合で当てた結果がありますが、条件をそろえて撮った写真では当たり方が弱く、頭の傾きなど写り方の影響だという批判もあります。性格や本音を顔から言い当てる、と確かめられた技術ではありません。
「72%当たった」は、10人中7人の考えを当てたということ?
違います。考え方の違う2人の顔写真を並べて、どちらがどちらかを当てる課題で72%正しかった、という意味です。でたらめに選んでも50%は当たる課題なので、1人ずつの考えをこの割合で当てられるわけではありません。
顔写真から内面を当てる診断アプリは、使っても大丈夫?
結果を真に受けないことが大切です。研究者からは、顔から内面を読む手法は根拠が弱いという強い批判があります。また、顔写真は送った先の運営者が扱いを決めます。送る前に、写真の保存や削除のルールを確かめてください。
SNSのプロフィールに顔写真を載せるのはやめたほうがいい?
やめる必要まではありませんが、公開範囲は一度確かめておくと安心です。研究では、投稿などネット上の痕跡から、年齢や性別、住んでいる地域などが推測されることが確かめられています。誰にでも見える場所に置く写真を、必要なものだけにしぼるのが現実的です。
出典
- Kosinski M (2021). Facial recognition technology can expose political orientation from naturalistic facial images. Scientific Reports, 11, 100.(訂正 Sci Rep 11, 23228 は補足資料の数値の表記の訂正) https://doi.org/10.1038/s41598-020-79310-1
- Kosinski M, Khambatta P, Wang Y (2024). Facial recognition technology and human raters can predict political orientation from images of expressionless faces even when controlling for demographics and self-presentation. American Psychologist, 79(7), 942-955. https://doi.org/10.1037/amp0001295
- Andrews M, Smart A, Birhane A (2024). The reanimation of pseudoscience in machine learning and its ethical repercussions. Patterns, 5(9), 101027. https://doi.org/10.1016/j.patter.2024.101027
- Hinds J, Joinson AN (2018). What demographic attributes do our digital footprints reveal? A systematic review. PLoS ONE, 13(11), e0207112. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0207112


