AIサービスの利用規約が難しくて読めない。入力の使われ方は「学習・保存期間・人の確認・削除」の4か所に絞って探す

AIサービスの利用規約やプライバシーポリシーは長く、言葉も硬く、最後まで読むのは大変です。全文を読まなくても、入力した内容の使われ方は「学習に使うか」「どのくらい保存するか」「人が見ることがあるか」「消せるか」の4点に絞れば、5〜10分で確かめられます。
3行でわかる
- 大学生543人の実験では、74%がプライバシーポリシーを読まずに登録し、読んだ人も平均73秒でした。読めないのは珍しいことではありません。
- 確かめるのは「学習・保存期間・人の確認・削除」の4点だけ。学習を止めても保存や人の確認は別、と説明する公式ヘルプもあります。
- 個人情報保護委員会は、利用規約やプライバシーポリシーを確認して判断するよう求めています。利用目的や開示請求の手続きは、法律上ポリシーなどで確かめられるはずの情報です。
01 結論から言うとAIの利用規約は、全部読まないとだめ?
全部読まなくてかまいません。入力した内容について確かめたいのは「学習に使うか・保存期間・人が見るか・削除できるか」の4点です。プライバシーポリシーとヘルプをページ内検索で探せば、数分でたどり着けます。
特に覚えておきたいのは、「学習に使わない」と「保存しない」は別のことだという点です。学習をオフにしても一定期間は保存されることがあり、人が確認したデータはさらに長く残る場合もあります。
ChatGPTの設定の場所は、ChatGPTに入力したデータの行き先と、学習を止める設定にあります。ここでは、どのサービスにも使える「どこを見るか」に絞ります。
02 研究とデータでわかっていること規約を読まない人は、どのくらいいる?
大学生543人の実験では74%がプライバシーポリシーを飛ばし、読んだ人も平均73秒でした。読み切るには29〜32分かかる長さでした。AI事業者6社のポリシーの分析では、大事な点が書かれていないことも多いと指摘されています。
Obar・Oeldorf-Hirsch(2018年オンライン公開、2020年掲載)[4]
架空のSNS「NameDrop」に登録してもらう実験で、74%がプライバシーポリシーを読まずに「かんたん登録」を選びました。読んだ人の平均はプライバシーポリシー73秒、利用規約51秒。大人の平均的な読む速さなら、それぞれ29〜32分、15〜17分かかる長さでした。規約に紛れ込ませた「データを国の機関や雇用主と共有する」「利用料として第一子を差し出す」という条項には、98%が気づきませんでした。
対象: 大学のコミュニケーション学を学ぶ学部生543人 / 限界: 生成AIではなくSNSの実験で、大学生に限られる。架空のサービスなので、本物のサービスでは読み方が変わる可能性がある。
King・Klymanら / スタンフォード大学(2025)[5]
米国の大手AI開発企業6社のプライバシーポリシーを比べると、6社すべてが初期設定でチャットを学習に使っているとみられました。一部は期限なく保存しており、ポリシーには大事な点が書かれていないことが多いと指摘しています。
対象: 米国の6社のプライバシーポリシー(カリフォルニア州の消費者プライバシー法を主な基準に分析) / 限界: 書かれた方針の分析で、実際のデータの扱いを確かめたものではない。その後の改定は反映されない。
個人情報保護委員会(2023年6月2日)[1]
入力した個人情報が機械学習に使われ、正確または不正確な内容で出力されるリスクがあると注意喚起しました。そのうえで、利用規約やプライバシーポリシー等を十分に確認し、入力する情報を踏まえて判断するよう利用者に求めています。
対象: 一般の利用者、個人情報を扱う事業者、行政機関など / 限界: 2023年時点の注意喚起で、個々のサービスの現在の設定を評価したものではない。
では、ポリシーには何が書かれているはずなのでしょうか。日本の個人情報保護法では、事業者は個人情報を取得したら、利用目的を本人に通知するか公表することになっています(第21条)[2]。保有する個人データについては、利用目的、開示などの請求の手続き、安全管理のために講じた措置、苦情の申出先などを、本人が知り得る状態に置くことになっています(第32条、施行令第10条)[2][3]。
つまり「何に使うか」と「どこに請求・相談するか」は、本人が知り得る状態にあるはずの情報です。学習の設定や保存期間の数字は、ヘルプ側に書かれていることもあります。
| 確かめたいこと | まず見る場所 | ページ内検索の言葉 |
|---|---|---|
| 学習に使うか | ポリシーの「利用目的」「情報の使い方」、ヘルプの「データ設定」 | 学習 / 改善 / training / improve |
| 保存期間 | ポリシーの「保存」「保持」、ヘルプの「データの保存」 | 保存 / 保持 / 期間 / retain / retention |
| 人が見るか | ヘルプの「レビュー」「安全」の説明 | レビュー / 確認 / review / human |
| 削除・開示 | ポリシーの「開示」「お問い合わせ」、ヘルプの「履歴の削除」 | 削除 / 開示 / 請求 / delete / request |
2つのサービスの公式ヘルプで4点を探した結果です(どちらかを勧めるものではありません)。
| 4点 | Gemini(Google)[6] | Claude(Anthropic)[7][8] |
|---|---|---|
| 学習 | 「アクティビティの保存」がオンだと、学習を含む改善に使われることがある。オフにすると今後のチャットは学習に使われない(フィードバックを送った場合を除く) | 「モデルの改善」を利用者が許可した場合に使う。安全確認の対象になった会話も使われることがある |
| 保存期間 | 初期設定では18か月で自動削除(3か月・36か月・自動削除なしに変更可)。オフでも72時間はアカウントに保存 | 改善を許可すると、個人が特定されない形で最長5年。削除した会話は30日以内にサーバーから消す。安全確認の対象は入力と出力を最長2年 |
| 人の確認 | 一部をレビュアーが確認。確認されたチャットは最長3年保存され、アクティビティを削除しても消えない | 確認した2ページには直接の説明が見当たらなかった |
| 削除 | 「Gemini アプリ アクティビティ」のページから確認・削除 | 会話を削除すると履歴からすぐ消え、30日以内にサーバーから消える |
仕組みや数字はサービスごとに違い、書かれていない項目もあります。書かれていない項目は「ない」ではなく「わからない」として扱うのが安全です。
03 まだわかっていないこと規約を読めば、データの扱いは全部わかる?
全部はわかりません。ポリシーに書かれた扱いと実際の扱いが一致しているかを、利用者が外から確かめる方法は限られています。日本の利用者がAIの規約をどのくらい読んでいるかの公的な調査も、今回は見つかりませんでした。
- ポリシーに書かれたとおりにデータが扱われているか。スタンフォード大学の分析も、書かれた方針を比べたもので、実際の扱いは確かめていない [5]
- 規約を短く・わかりやすくすると、AIサービスの利用者の理解がどのくらい深まるか。今回調べた範囲では、生成AIの規約で測った研究は見つからなかった
- 日本の利用者が、AIサービスの規約や学習の設定をどのくらい確かめているか。今回調べた範囲では、公的機関の調査は見つからなかった
04 今日からできること規約のどこを、どう確かめればいい?
使っているAIサービスのポリシーとヘルプを開き、4つの言葉でページ内検索します。設定画面で学習の設定を確かめ、わからない項目は「入れない」で備えます。どれもお金はかかりません。
4つの言葉でページ内検索する
プライバシーポリシーとヘルプを開き、「学習」「保存」「レビュー」「削除」で検索します(英語なら training・retention・review・delete)。見つけた段落だけを読みます。
目安 1サービス5〜10分
設定画面で「学習」の設定を確かめる
ヘルプに書かれた場所を開き、オンかオフかを見ます。オフでも保存や人の確認は別です。
目安 3分(規約が改定されたら再確認)
4点を1行ずつメモする
「学習: オフ」「保存: 18か月」のように日付と一緒にメモし、書かれていない項目は「不明」と書きます。
目安 2分
「不明」が残ったら、その情報は入れない
見られたくない内容や他人の個人情報は入力しないか、「Aさん」のように置き換えます。会社の情報は勤め先のルールが先です。
目安 入力する前に毎回10秒
自分の写真や声の扱いが気になるときは、SNSでできる学習の設定と公開範囲の見直しを、すでに入力してしまったときはAIに入力してしまったあとにできることをご覧ください。確かめる手間に疲れたときは「どうせ漏れている」と守る気が起きないときへ。
個人情報保護法相談ダイヤル(03-6457-9849、9:30〜17:30、土日祝日・年末年始を除く): 事業者の個人情報の扱いや、開示の請求について個人情報保護委員会に相談できます。
05よくある質問
利用規約に同意したら、自分のデータについてもう何も言えないの?
そうとは限りません。個人情報保護法では、本人が事業者に対し、自分が識別される保有個人データの開示を請求できると定められています(第33条)。請求の手続きは、事業者が本人の知り得る状態に置くべき事項の1つです(第32条)。個別の事情で判断に迷うときは、個人情報保護委員会の個人情報保護法相談ダイヤル(03-6457-9849)に相談できます。
学習をオフにすれば、人に見られたり保存されたりすることもないの?
同じではありません。公式ヘルプでは、学習・保存・人による確認が別々の項目として説明されています。たとえばGeminiのヘルプでは、アクティビティの保存をオフにしても、チャットは72時間アカウントに保存されるとされています。レビュアーが確認したチャットは最長3年間保存され、アクティビティを削除しても消えないとも書かれています。
海外のAIサービスにも、日本の個人情報保護法は関係あるの?
個人情報保護法の第171条には、国内にいる人に物品や役務を提供することに関連して、国内にいる人の個人情報を外国で取り扱う場合にも、この法律を適用するという規定があります。個別のサービスがどう当てはまるかの判断は、個人情報保護委員会の相談ダイヤルなどに確かめてください。
出典
- 個人情報保護委員会 (2023). 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等(令和5年6月2日). https://www.ppc.go.jp/files/pdf/230602_alert_generative_AI_service.pdf
- 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第21条・第32条・第33条・第171条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057
- 個人情報の保護に関する法律施行令(平成15年政令第507号)第10条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/415CO0000000507
- Obar JA, Oeldorf-Hirsch A (2020). The biggest lie on the Internet: ignoring the privacy policies and terms of service policies of social networking services. Information, Communication & Society, 23(1), 128-147. https://doi.org/10.1080/1369118X.2018.1486870
- King J, Klyman K, Capstick E, Saade T, Hsieh V (2025). User Privacy and Large Language Models: An Analysis of Frontier Developers' Privacy Policies. Proceedings of the AAAI/ACM Conference on AI, Ethics, and Society, 8(2), 1465-1477. https://doi.org/10.1609/aies.v8i2.36646
- Google. Gemini アプリのプライバシー ハブ(2026年10月に確認). https://support.google.com/gemini/answer/13594961?hl=ja
- Anthropic Privacy Center. Is my data used for model training?(2026年10月に確認). https://privacy.claude.com/en/articles/10023580-is-my-data-used-for-model-training
- Anthropic Privacy Center. How long do you store my data?(2026年10月に確認). https://privacy.claude.com/en/articles/10023548-how-long-do-you-store-my-data


