SNSの投稿から、AIに性格や個人的なことを当てられる?研究では投稿や「いいね」からある程度推測でき、当たり方は項目しだいだった

名前も住所も書いていないのに、何気ない投稿や「いいね」から、AIに性格や考え方を読み取られてしまうのでは。そんな不安を感じる人は少なくありません。研究では、投稿や「いいね」からAIが性格などをある程度推測できることが確かめられています。ただ、当たり方は項目によって大きく違い、一人ひとりをぴたりと当てるほどではありませんでした。
3行でわかる
- 1,000人のFacebookの投稿を使った研究では、ChatGPT(GPT-3.5・GPT-4)が性格を推測でき、本人の回答との相関は平均0.29でした。
- 5万8千人超の「いいね」の研究では、支持政党などのデリケートな属性も、2つのグループを見分ける形でかなりの精度で推測できました。
- 推測は「傾向がわかる」程度で、外れることもあります。不安なら、公開している投稿と「いいね」の範囲を見直すことから始めます。
01 結論から言うとAIはSNSの投稿から、自分のことを当てられる?
ある程度は推測できます。研究では、投稿の文章や「いいね」から性格や支持政党などを推測でき、項目によっては高い精度でした。ただし性格の推測は「傾向が合う」程度で、一人ひとりを言い当てるほど正確ではありません。
ここでいう「推測」は、投稿に書かれていないことを、言葉づかいや話題、反応したページの組み合わせから統計的に当てることです。たとえば「旅行の話が多い」「人をほめる言葉が多い」といった手がかりの積み重ねから、性格の傾向を見積もります。
大事なのは、当たりやすい項目と当たりにくい項目があることです。2つのグループのどちらかを見分ける問題(たとえば支持政党)では精度が高く出やすく、性格の細かい度合いを当てる問題では、関係はあっても強くはありませんでした。
AIに入力したデータそのものの行き先はChatGPTに入力したデータの行き先と、学習を止める設定で、写真や声が学習に使われる不安はSNSの写真や声とAIの学習の設定で整理しています。この記事は「公開した投稿から何が読み取れるのか」に絞ります。
02 研究とデータでわかっていること投稿や「いいね」から、どこまで推測できた?
ChatGPTは、Facebookの投稿から性格を推測でき、本人の回答との相関は平均0.29でした。「いいね」を使った別の研究では、支持政党を見分ける精度が85%、性格の判断では友人より正確でした。
Peters・Matz / コロンビア大学(2024) [1]
ChatGPT(GPT-3.5とGPT-4)に、成人1,000人のFacebookの投稿を200件ずつ読ませ、性格の5つの特徴(開放性・まじめさ・外向性・協調性・神経症傾向)を推測させました。推測と本人の性格検査の相関は0.22〜0.33、平均0.29でした。この推測のために特別な訓練はしていませんが、専用に訓練したモデルの過去の研究(平均0.37)よりやや低いものの、近い水準でした。投稿が多いほど精度は上がりましたが、多くの特徴では、200件よりかなり少ない投稿で最大に近い水準に達していました。また、いくつかの特徴では、女性や若い人のほうが推測が当たりやすい傾向もありました。
対象: 性格検査100問に答え、投稿を研究に提供した成人1,000人(平均24.2歳、女性63.1%) / 限界: 投稿は2007〜2012年のFacebookアプリの利用者のもので、利用者全体を代表しているとは限らない。研究者は、新しいデータではもっと精度が上がる可能性があるとも書いている。
Kosinski・Stillwell・Graepel(2013) [2]
Facebookの「いいね」だけから、デリケートな属性を推測できるかを調べました。2つのグループを見分ける精度は、米国の民主党と共和党の支持者で85%、アフリカ系と白人系の米国人で95%でした。男性の性的指向でも88%でした。性格のうち「開放性」は、同じ性格検査を2回受けたときの一致度に近い精度でした。
対象: 「いいね」と詳しいプロフィール、心理検査の結果を提供した5万8千人超のボランティア / 限界: 生成AIではなく、統計的な予測モデルの研究。米国中心のデータで、2つのグループを見分ける精度は、一人ひとりの属性を当てる精度とは同じではない。
Youyou・Kosinski・Stillwell(2015) [3]
性格検査100問に答えた86,220人のデータで、「いいね」を使ったコンピューターの判断(相関0.56)は、Facebookの友人が性格の質問紙で答えた判断(相関0.49)より正確でした。さらに、コンピューターの判断は、物質の使用や政治的な態度、体の健康の予測にも使え、一部では本人の自己評価より予測がよく当たりました。
対象: 性格検査100問に答えたボランティア86,220人 / 限界: 生成AIではなく、「いいね」の統計モデルの研究。データは古いFacebookのもので、今のSNSで同じかはわからない。
3つの研究で、何から何を推測できたかを1つの表にまとめました。生成AIの研究は、まだこのうちの1本だけです。
| 使った情報 | 推測したもの | 結果 |
|---|---|---|
| 投稿の文章(ChatGPT) | 性格の5つの特徴 | 相関0.22〜0.33。関係はあるが強くはない [1] |
| 「いいね」(統計モデル) | 支持政党・人種・性的指向など | 2つのグループを見分ける精度85〜95% [2] |
| 「いいね」(統計モデル) | 性格 | 相関0.56。友人の判断(0.49)より正確 [3] |
相関0.29は、0(関係なし)と1(完全に一致)のあいだで、関係はあるものの強くはない水準です。「この人はまじめだ」と一人を言い当てるには足りませんが、たくさんの人を並べたときに、性格の傾向で大まかに分けることはできる、という程度に受け取るのが正確です。
03 まだわかっていないこと日本語の投稿や最新のAIでも同じ?
まだわかっていません。生成AIで調べた研究は英語のFacebookの古い投稿が中心で、日本語の投稿、今のSNS、最新のAIで同じ精度が出るかは確かめられていません。実際に誰かが推測に使っているかも、これらの研究の範囲外です。
- 日本語の投稿で、生成AIがどこまで推測できるか。
- 最新のAIや、写真・動画を含む今のSNSの投稿で、精度がどう変わるか。研究者は、新しいデータでは精度が上がる可能性を指摘しています。
- 公開された投稿が、実際に企業や他人によって推測に使われているのか、どのくらいの規模なのか。
- AIが男性や年配の人の性格を外しやすかった理由(学習データの偏りか、SNSでの自己表現の違いか)。
04 今日からできること投稿から読み取られる不安を減らすには?
投稿をやめる必要はありません。公開している投稿と「いいね」の範囲を見直し、デリケートな話題は公開範囲をしぼって書くことから始めます。AIの推測は外れることもあると知っておくことも、不安を小さくします。
「誰が見られるか」を1つのSNSだけ確かめる
よく使うSNSを1つ選び、投稿と「いいね」(反応した投稿の一覧)が、誰に見える設定になっているかを確かめます。研究で推測の材料になったのは、投稿の文章と「いいね」でした。
目安 1つのSNSにつき5分
デリケートな話題は、公開範囲をしぼって書く
政治的な考え、健康、信仰、恋愛などは、推測されると困る人も多い話題です。書くなら、友人だけに見える投稿にするなど、公開範囲をしぼります。
目安 投稿のたびに数秒
昔の公開投稿を、少しずつ見直す
ChatGPTの研究では、200件よりかなり少ない投稿でも、多くの特徴で推測の精度は最大に近づいていました。全部を消す必要はありませんが、気になる古い公開投稿を月に1回、数件ずつ見直します。
目安 月1回10分
人の投稿をAIに貼って「性格診断」しない
AIで心理的な特徴を手軽に推測できることには、プライバシーと自己決定の面で倫理的な懸念があると、研究者自身が指摘しています。推測が外れて相手を誤解するおそれもあります。
目安 今日から
守ることに疲れて「どうせ全部知られている」と感じるときは、個人情報を守る気が起きないときの立て直し方も参考になります。全部を守ろうとせず、1か所から始めれば十分です。
05よくある質問
AIは、SNSの投稿だけで私の性格を言い当てられるの?
ある程度の傾向は推測できますが、一人ひとりをぴたりと当てるほどではありません。1,000人のFacebookの投稿を使った研究では、AIの推測と本人の回答の相関は平均0.29で、関係はあるものの強くはない水準でした。
鍵をかけていない投稿は、全部推測の材料になるの?
研究で使われたのは、本人が研究への提供に同意した投稿や「いいね」です。公開された投稿が実際に誰にどう使われているかを、これらの研究は調べていません。ただ、公開されている情報は誰でも読めるので、推測の材料になりうると考えておくのが安全です。
人の投稿をAIに貼って、性格を分析してもらうのは問題ない?
おすすめしません。研究者自身が、AIで心理的な特徴を手軽に推測できることには、プライバシーと自己決定の面で倫理的な懸念があると指摘しています。推測が外れて、相手を誤解するおそれもあります。
出典
- Peters H, Matz SC (2024). Large language models can infer psychological dispositions of social media users. PNAS Nexus, 3(6), pgae231. https://doi.org/10.1093/pnasnexus/pgae231
- Kosinski M, Stillwell D, Graepel T (2013). Private traits and attributes are predictable from digital records of human behavior. Proceedings of the National Academy of Sciences, 110(15), 5802-5805. https://doi.org/10.1073/pnas.1218772110
- Youyou W, Kosinski M, Stillwell D (2015). Computer-based personality judgments are more accurate than those made by humans. Proceedings of the National Academy of Sciences, 112(4), 1036-1040. https://doi.org/10.1073/pnas.1418680112


