AIの加工アプリに顔写真を送ってしまった。消せるかは運営者しだいで、まず規約・権限・削除の依頼先を確かめる

流行りのAI加工アプリや似顔絵アプリに、自分や家族の顔写真を送ってしまった。あとから「あの写真はどこへ行ったのだろう」と気になるのは、自然なことです。送った写真を確実に取り戻す方法はありません。それでも、運営者に削除や開示を求める手続きと、これ以上送らないための設定があります。今日できることから順に整理します。
3行でわかる
- アプリを消しても、運営者に送った顔写真まで消えるとは限りません。消せるかどうかは、運営者の保存と削除の仕組みしだいです。
- 個人情報保護委員会のガイドラインの考え方では、本人が判別できる顔写真は個人情報にあたります。運営者が保有個人データとして持っている場合、個人情報保護法にもとづいて開示や利用停止・消去を求める手続きがあります(認められるかは条件しだい)。
- 今日やるのは、規約で「保存・学習・削除」を確かめる、写真へのアクセス権限を見直す、削除を依頼して記録を残す、の3つです。
01 結論から言うと加工アプリに送った顔写真は、消せる?
送った顔写真を消せるかは、運営者がどう保存し、削除の依頼にどう応じるかで決まります。アプリを消すだけでは足りないことがあるため、規約で削除の窓口を確かめ、運営者に依頼するのが出発点です。
加工や似顔絵のアプリには、写真を運営者のサーバーに送って処理するものがあります。スマホからアプリを消すのは、手元の操作です。運営者の側に残った写真が、それで消えるとは限りません。
一方で、本人が判別できる顔写真は、個人情報保護委員会のガイドラインの考え方では個人情報にあたります。ガイドラインは、個人情報にあたる例として「防犯カメラに記録された情報等本人が判別できる映像情報」を挙げています。[2] 顔の形や目・鼻・口の位置などから作った本人を見分けるためのデータは、施行令で個人識別符号と定められています。[4] 個人情報保護法は、運営者に削除などを求める手続きを本人に用意しています。[3]
送ってしまったことを責める必要はありません。大事なのは、ここから何を確かめるかです。
お店や駅の顔認証カメラの話は顔認証やAIカメラで自分の顔が登録されている?、SNSに載せた写真が学習に使われる不安は自分の写真や声がAIの学習に使われるのが不安で扱っています。
02 研究とデータでわかっていること送った顔写真で、何が起きうる?
顔写真は、ネット上の別の写真と照らし合わせて本人を特定する手がかりになることが、研究で示されています。一度集められた顔のデータは、元が撤回されても使われ続けた例があります。偽の画像の材料になりうることも、レビュー論文が指摘しています。
Acquistiら(2014)[7]
市販の顔認識ソフトで、大学の建物の前で撮った参加者の顔を、SNSの公開プロフィール写真約26万枚と照らし合わせました。評価者全員が一致した基準で、31.18%の参加者について、本人と一致するSNSの写真が見つかりました。名前を伏せた出会い系サイトの利用者でも、約10人に1人がSNSのプロフィールと結びつけられました。
対象: 米国の大学で集めた93人など / 限界: 2011年ごろの技術での実験。加工アプリの写真がこう使われたことを示すものではない。
Pengら(2021)[8]
顔認識や人物認識に使われてきた3つのデータセットについて、引用した論文946本を分析しました。2つのデータセットは2019年に作成者が撤回しましたが、元のデータは広く出回ったままで、撤回後も論文で使われ続けていました。そのうち1つでは、2020年の使用のほとんどが派生したデータを通じたものでした。
対象: 研究用に公開された顔などのデータセット / 限界: 研究での使われ方の分析で、加工アプリの運営者の扱いを調べたものではない。
Nguyenら(2022)[9]
ディープフェイク(AIで作った偽の顔画像や動画)の研究をまとめたレビューです。作るには通常、その人の大量の画像や動画が必要で、ネット上に写真や動画が多い有名人や政治家が最初の標的になったと説明しています。
対象: 偽の画像・動画を作る・見分ける技術の研究 / 限界: 技術の整理で、被害の件数を数えたものではない。
個人情報保護委員会(2023年6月2日)[1]
文章や画像を生成するAIサービスについて、利用者向けにも注意喚起を出しました。入力された個人情報が機械学習に使われ、出力されるリスクがあるとし、利用規約やプライバシーポリシーを十分に確かめるよう呼びかけています。
対象: 生成AIサービスの利用者と事業者 / 限界: 特定のアプリを評価したものではなく、顔写真に限った注意喚起でもない。
個人情報保護委員会の事務局は、改正法の説明資料で、顔特徴データは本人が知らないうちに大量に集められやすく、本人を見分ける効果が長く続くと説明しています。[6] パスワードと違って、顔は取り替えがききません。
運営者が保有個人データとして顔写真を持っている場合に本人が求められることを、条文をもとにまとめました。
| 求められること | 条件と注意 |
|---|---|
| 利用目的と、請求の手続きを知る | 運営者は、利用目的や開示などの請求に応じる手続きを、本人が知りうる状態に置くことになっている(第32条) |
| 持っているデータの開示 | 電子データでの提供など、方法を指定して請求できる。本人や第三者の権利を害するおそれがある場合などは、開示されないことがある(第33条)。手数料がかかる場合がある(第38条) |
| 利用停止・消去 | 法律に違反した扱いのほか、利用する必要がなくなった場合や、本人の権利や正当な利益が害されるおそれがある場合に請求できる。応じる範囲は必要な限度まで(第35条) |
| 海外の運営者 | 日本にいる人にサービスを提供していて、その人の個人情報を海外で扱う場合も、法律が適用される(第171条) |
利用停止・消去を求められる場合は、2022年4月に全面施行された改正で、法律違反のときだけでなく上の表の場合にも広がりました。[5] 請求は代理人を通してもできると定められています(第37条)。[3] 子どもの写真を送った場合の扱いを含め、個別の事情で認められるかは、この記事では判断できません。
03 まだわかっていないこと送った写真が悪用されたかは、わかる?
送った写真が実際に学習や悪用に使われたかを、利用者が外から確かめる方法は、今回の調査では見つかりませんでした。加工アプリの相談件数をまとめた公的な統計も見つかりませんでした。
- 加工アプリに送った顔写真が、どのくらい保存・学習・第三者への提供に使われているかを調べた研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。
- すでにAIの学習に使われた写真をモデルから取り除けるのかは、今回確認した資料には説明がありませんでした。
- 2026年に成立した改正法では、顔特徴データについて、扱っていることや利用停止の手続きなどの周知の義務化と、利用停止の請求の要件をゆるめることが示されています。資料は、対象は単なる顔写真ではなく顔特徴データを想定していると説明しており、具体的な範囲は今後の政令などで決まります。[6]
04 今日からできること写真を送ったあと、何から始めればいい?
まず規約で保存・学習・削除の3点を確かめ、写真へのアクセス権限を見直し、運営者に削除を依頼して記録を残します。どれも無料で、合わせて1時間かからずにできます。
規約で「保存・学習・削除」の3か所を探す
アプリのプライバシーポリシーを開き、写真の保存期間、AIの学習に使うか、削除や開示の依頼先の3点だけを探し、スクリーンショットで残します。運営者の名前と国もメモします。探し方はAIサービスの利用規約が難しくて読めないにまとめています。
目安 15分
写真へのアクセス権限を見直す
iPhoneは「設定」から「プライバシーとセキュリティ」を開き、写真をタップすると、アクセスを求めたアプリの一覧が出ます。[11] Androidは「設定」の「アプリ」から対象のアプリを選び、「権限」で写真と動画を「許可しない」にできます。[12]
目安 5分
運営者に削除を依頼し、やりとりを残す
規約にある窓口から「送った顔写真と、そこから作ったデータの削除」を依頼します。送った日、使った機能、アカウント名を添え、返事の日付と内容は保存しておきます。
目安 20分(返事を待つ期間は運営者しだい)
お試しの課金が続いていないか確かめる
国民生活センターは、サブスクを解約したつもりで請求が続いていた相談を紹介し、契約内容や毎月の明細を確かめるよう呼びかけています。[10] ストアのサブスクリプションの画面を見ます。
目安 5分
個人情報保護法相談ダイヤル(03-6457-9849): 運営者の個人情報の扱いへの苦情や、法律や制度について聞きたいとき。平日9:30〜17:30(年末年始を除く)。[13]
消費者ホットライン(188): 解約できない、課金が止まらないなど、契約のトラブルのとき。
加工された自分の画像を見つけたらディープフェイク被害のあとは「証拠・報告・相談」の3つ、漏えいの通知が届いたらAIサービスから個人情報が漏れたと通知が来たを見てください。
05よくある質問
アプリを削除すれば、送った顔写真も消える?
消えるとは限りません。アプリの削除はスマホの中の操作で、運営者のサーバーに送った写真の扱いは、運営者の保存と削除の仕組みで決まります。規約で保存期間と削除の依頼先を確かめ、必要なら運営者に削除を依頼します。
顔写真は個人情報になるの?
個人情報保護委員会のガイドラインの考え方では、本人が判別できる顔写真は個人情報にあたります。ガイドラインは、個人情報の例に「本人が判別できる映像情報」を挙げています。顔の形などから作った、本人を見分けるためのデータは、施行令で個人識別符号と定められています。
海外のアプリでも、削除を求められる?
個人情報保護法の第171条は、日本にいる人にサービスを提供する事業者が、その人の個人情報を海外で扱う場合にも法律を適用すると定めています。削除が認められるかは条件しだいです。まず規約の窓口に依頼し、扱いがわからなければ個人情報保護法相談ダイヤルに相談できます。
家族や子どもの顔写真を送ってしまった場合は?
手順は同じで、規約の確認、権限の見直し、削除の依頼の順に進めます。個人情報保護法は、開示などの請求を代理人を通してできると定めています。家族にも送ったことを伝えておきます。
出典
- 個人情報保護委員会 (2023年6月2日). 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等(別添1). https://www.ppc.go.jp/files/pdf/230602_alert_generative_AI_service.pdf
- 個人情報保護委員会. 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)2-1 個人情報. https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/
- 個人情報の保護に関する法律(第32条、第33条、第35条、第37条、第38条、第171条). e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057
- 個人情報の保護に関する法律施行令(第1条). e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/415CO0000000507
- 個人情報保護委員会 (2022年3月). 令和2年改正個人情報保護法について. https://www.ppc.go.jp/files/pdf/r2kaiseihou.pdf
- 個人情報保護委員会 事務局 (2026). 個人情報保護法等の一部を改正する法律について. https://www.ppc.go.jp/files/pdf/260717_kaiseihounitsuite.pdf
- Acquisti A, Gross R, Stutzman F (2014). Face Recognition and Privacy in the Age of Augmented Reality. Journal of Privacy and Confidentiality, 6(2). https://doi.org/10.29012/jpc.v6i2.638
- Peng K, Mathur A, Narayanan A (2021). Mitigating dataset harms requires stewardship: Lessons from 1000 papers. NeurIPS 2021 Track on Datasets and Benchmarks. https://datasets-benchmarks-proceedings.neurips.cc/paper/2021/hash/077e29b11be80ab57e1a2ecabb7da330-Abstract-round2.html
- Nguyen TT, Nguyen QVH, Nguyen DT, et al. (2022). Deep learning for deepfakes creation and detection: A survey. Computer Vision and Image Understanding, 223, 103525. https://doi.org/10.1016/j.cviu.2022.103525
- 国民生活センター (2021年10月7日). 「解約したはず!」「契約してない!」と思い込んでいませんか? 予期せぬ“サブスク”の請求トラブルに注意!. https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20211007_1.html
- Apple (2026年10月13日確認). iPhone上でアプリ内の情報へのアクセスを制御する. iPhoneユーザガイド. https://support.apple.com/ja-jp/guide/iphone/iph251e92810/ios
- Google (2026年10月13日確認). Android スマートフォンでアプリの権限を変更する. Android ヘルプ. https://support.google.com/android/answer/9431959?hl=ja
- 個人情報保護委員会. 個人情報保護法相談ダイヤル. https://www.ppc.go.jp/personalinfo/pipldial/


