AIに筋トレや運動のメニューを作ってもらっても大丈夫?研究では、24件のうち14件でAIの運動プランに安全面の問題が見つかり、持病があるなら始める前に人に見てもらう

運動を始めたいけれど、何をどれくらいやればいいかわからない。AIに聞けば、1か月分のメニューを数秒で表にしてくれます。便利な一方で、「本当に自分に合っているの?」と気になりますよね。研究では、AIの運動プランは健康な人のたたき台としては使える一方、持病のある人では危ない提案が混ざることがわかってきました。始める前に何を確かめればいいかを整理します。
3行でわかる
- AIの運動の提案を調べた24件の研究のまとめでは、14件(58%)で安全面の問題が見つかりました。持病のある人向けに、避けるべき運動が勧められた例もあります。
- 書かれた内容の約9割は指針どおりでした。弱いのは「抜け」で、運動の量や回数、ペースの上げ方が足りないことが多くありました。
- 健康な人は軽めのたたき台として使い、持病・けが・妊娠中などの人は、始める前に医師や運動の専門家に見てもらいます。
01 結論から言うとAIの運動メニューは、そのまま信じていい?
健康な人が軽めに始めるたたき台としては使えます。ただ、持病のある人向けの提案に安全面の問題が多く見つかっています。持病やけががあるなら、始める前に人に見てもらうのが確かです。
チャットAIの答えは、もっともらしい文章として出てきます。運動のメニューも、曜日・種目・時間がきれいな表になって出てくるので、専門家が作ったもののように見えます。
けれど、AIはあなたの体を見ていません。伝えていない持病や、前に痛めた場所は考えに入りません。伝えた情報でも、取りこぼすことがあります。この記事は、AIのプランを使う「前」に確かめることを中心に書きます。食事のプランについてはAIに献立やダイエットの食事を作ってもらっても大丈夫?で整理しています。
02 研究とデータでわかっていることAIの運動プランは、どこが弱いの?
書かれた内容の多くは指針どおりですが、量・回数・ペースの上げ方が抜けやすく、持病のある人では避けるべき運動が混ざった例があります。条件を詳しく伝えるほど質は上がりますが、専門家の確認は欠かせないとされています。
Heら / Biology of Sport(2026)[1]
AIが作る運動の提案を調べた24件の研究(参加者は合計2,512人)をまとめました。14件(58%)で安全面の問題が見つかり、持病のある人向けに避けるべき運動が勧められていました。AIと人の専門家を直接比べた6件のうち5件では、体力などの伸びがAIのプランのほうで劣っていました。
対象: 2025年6月19日までに発表された24件 / 限界: 24件のうち11件は専門家がプランを読んで評価した研究で、実際にけがが増えたかを数えたものではない。
Zaleskiら / JMIR Medical Education(2024)[2]
AIに、26の病気や状態の人向けの運動の助言を作らせ、米国スポーツ医学会の指針と比べました。書かれた内容の90.7%(161件中146件)は正確でした。一方、指針が求める項目のうち入っていたのは41.2%で、運動の量をすべて示した助言は26件中0件でした。誤りの半数余り(15件中8件)は、健康な人にも「始める前に医師に相談を」とすすめるなど、受診が必要かどうかに関するものでした。
対象: 2023年3月のChatGPT(3.5)に、26の状態について1回ずつ聞いた答え / 限界: 古いモデルで、今のAIに同じ割合が当てはまるとは限らない。
Akrimiら / Sports(2025)[3]
2型糖尿病の架空の患者3人について、3種類の頼み方でAIに運動プランを9本作らせ、運動指導の専門家3人が評価しました。目の合併症(増殖網膜症)がある患者に、勧められていない高強度の運動が出ていました。始める前の受診のすすめは、9本中8本で「低い」評価でした。詳しく頼むほど、評価はよくなる傾向がありました。
対象: 架空の患者3人・1つのAI / 限界: 予備的なデータにもとづく小さな研究で、評価したのは3人。
Dükingら / Journal of Sports Science and Medicine(2024)[4]
ランナー向けの6週間の練習プランを、伝える情報の細かさを変えて3本作らせ、22の基準で専門家が評価しました。中央値が「5段階の3未満」だった基準は、情報が最も少ないプランで19、中くらいで11、最も詳しいプランで1でした。著者らは、コーチの確認なしにAIのプランを使うのは避けるよう勧めています。
対象: ランナー向けの架空の条件 / 限界: 1つのAIで作ったプラン3本の評価。
AIが慎重すぎる場面もあります。2023年6月にGPT-4で5人の架空の人物向けにプランを作らせた研究では、専門家は、プランが安全を重視して中くらいの強さの運動に寄っており、慎重すぎるとも受け取れると評価しました[5]。危ない提案が混ざることも、物足りない提案になることもある、というのが今の姿です。
03 まだわかっていないことAIのメニューで、実際にけがは増える?
わかっていません。研究のまとめに入った24件のうち、実際に運動してもらった試験は6件だけで、残りは専門家がプランを読んで評価した研究や、使う人の反応を調べた研究です。AIのプランで運動した人のけがや体調不良を、長い期間追って数えた研究は、今回は見つかりませんでした。
- AIのプランで実際に運動した研究は、数週間の小さな試験が中心です。けがや体調不良が増えるかどうかは、まだ確かめられていません。
- 紹介した研究の多くは2023〜2024年ごろのAIで調べています。研究のまとめでも、AIの答えの質は研究ごとに大きくばらついていて、新しいAIでどこまで改善したかははっきりしません[1]。
- 紹介した研究は、米国スポーツ医学会など海外の指針を基準に評価しています。日本の指針に照らしたときに同じ結果になるかはわかりません。
04 今日からできることAIのメニューを使う前に、何を確かめる?
まず自分が「人に見てもらう側」かを確かめます。持病などがなければ、量・回数・休みの日・ペースの上げ方が書かれているかを点検し、最初の2週間は軽めに始めます。
自分が「人に見てもらう側」かを確かめる
持病(心臓・血圧・糖尿病など)がある、治療中のけがや痛みがある、妊娠中、しばらく運動していない高齢の人は、AIのメニューをそのまま始めず、かかりつけ医や理学療法士などに見せます。研究では、持病のある人向けの提案で問題が多く見つかっています[1][3]。
目安 確認1分・相談は次の受診のとき
頼むときに、条件を具体的に伝える
年齢、今の運動の習慣、使える時間、気になる痛みや持病、目的を伝えます。詳しく伝えたプランほど評価が上がっていました[4]。病名や薬の名前など、伝えたくない情報は書かなくてかまいません。そのぶん、出てきたプランは「自分の事情を知らない人の案」として扱います。
目安 5分
「抜け」がないかを4点で点検する
①1回の量(回数・セット・時間)②週に何回か ③休みの日 ④何週目にどう増やすか、が書かれているかを見ます。研究では、量やペースの上げ方が抜けやすいことがわかっています[2]。抜けていれば、AIに聞き直すか、軽めに自分で決めます。
目安 5分
最初の2週間は軽めにして、痛みが出たら止める
表のとおりに全部こなそうとせず、きついと感じたら量を減らします。胸の痛み、強い息切れ、めまい、関節の痛みが出たら、その日の運動はやめます。続くときは医療機関に相談します。
目安 2週間
体調のことをAIに聞いて不安が残ったときの考え方はAIに症状を相談したら「様子を見て大丈夫」と言われたで、AIの説明を信じすぎてしまう理由は詳しくない分野ほど、AIの説明を信じすぎてしまう?で整理しています。
05よくある質問
AIに作ってもらった筋トレメニューは、そのまま使っても大丈夫?
持病やけががない健康な人なら、軽めから始めるたたき台としては使えます。ただ研究では、AIのプランは回数や量の情報が抜けやすく、ペースの上げ方が速すぎると評価された例もありました。最初の1〜2週は軽めにして、体の反応を見ながら調整します。
持病があるけど、AIに運動メニューを聞いてもいい?
聞くこと自体はかまいませんが、そのまま始めないでください。糖尿病の架空の患者で調べた研究では、目の合併症がある人に、勧められない高強度の運動が出ていました。医師や運動の専門家に見せてから使います。
AIに詳しく条件を伝えれば、よいメニューになる?
よくなる傾向はあります。ランナー向けの研究では、年齢や練習の記録などを詳しく伝えたプランほど専門家の評価が上がりました。それでも専門家は、コーチの確認なしで使うことは勧めていません。
AIが「運動の前に医師に相談を」と言うのは、気にしなくていい?
場合によります。研究では、健康な人にも受診をすすめる答えがあり、指針とずれた答えの半数余りがこの点でした。一方で、受診が必要な持病のある人に、そのすすめが抜けていた研究もあります。自分に持病や症状があるかで判断します。
出典
- He, T., Lu, D., Ma, Y., He, J., Li, D., Li, G., & Sun, J. (2026). The AI recommendation paradox: a systematic review evaluating the promise, peril, and path forward for large language models in exercise recommendation. Biology of Sport, 43, 949–961. https://doi.org/10.5114/biolsport.2026.158676
- Zaleski, A. L., Berkowsky, R., Craig, K. J. T., & Pescatello, L. S. (2024). Comprehensiveness, Accuracy, and Readability of Exercise Recommendations Provided by an AI-Based Chatbot: Mixed Methods Study. JMIR Medical Education, 10, e51308. https://doi.org/10.2196/51308
- Akrimi, S., Schwensfeier, L., Düking, P., Kreutz, T., & Brinkmann, C. (2025). ChatGPT-4o-Generated Exercise Plans for Patients with Type 2 Diabetes Mellitus—Assessment of Their Safety and Other Quality Criteria by Coaching Experts. Sports, 13(4), 92. https://doi.org/10.3390/sports13040092
- Düking, P., Sperlich, B., Voigt, L., Van Hooren, B., Zanini, M., & Zinner, C. (2024). ChatGPT Generated Training Plans for Runners are not Rated Optimal by Coaching Experts, but Increase in Quality with Additional Input Information. Journal of Sports Science and Medicine, 23(1), 56–72. https://doi.org/10.52082/jssm.2024.56
- Dergaa, I., Ben Saad, H., El Omri, A., et al. (2024). Using artificial intelligence for exercise prescription in personalised health promotion: A critical evaluation of OpenAI’s GPT-4 model. Biology of Sport, 41(2), 221–241. https://doi.org/10.5114/biolsport.2024.133661


