AIに頼りすぎ

健康診断や血液検査の結果、AIに読み解いてもらっても大丈夫?研究では、AIが示す基準値は聞くたびにぶれ、結果用紙の基準範囲を渡して用語の説明役にとどめるのが確かだった

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わかっている度 ★★☆ 中研究4本・公的資料0件を整理
キーボードの上の聴診器と心電図の記録紙
Photo: Ivan2010 / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

健康診断の結果が届いて、見慣れない略語と「H」「L」の印が並んでいる。次の受診まで待てずに、AIに「この数字はどういう意味?」と聞きたくなるのは自然なことです。研究からは、AIは用語の説明には役立つ一方で、基準値や一人ひとりの事情の判断には弱いことが見えてきました。聞く前に決めておきたい使い方を整理します。

3行でわかる

  1. 同じ条件で基準値を何度も聞いた研究では、AIが示す値は聞くたびにぶれ、下限のぶれは中央値で26.5%ありました。基準値はAIに聞かず、結果用紙の基準範囲を使います。
  2. 医師らが点検した研究では、AIの説明はおおむね正確と評価された一方、その人の事情を踏まえない答えや誤った説明も見つかりました。
  3. AIは「用語と検査の目的の説明」と「医師に聞く質問づくり」に使い、値の受け止め方や受診の判断は、結果用紙の指示と医師に任せます。

01 結論から言うと検査結果の読み解きを、AIに任せていい?

任せきりにするのは勧められません。AIは検査の用語や目的の説明には役立ちますが、基準値は聞くたびにぶれ、持病や薬など一人ひとりの事情を踏まえた判断はできていませんでした。

AIの説明がまったく当てにならないわけではありません。患者の質問への答えを医師らが採点した研究では、1つの検査項目の説明は「正確」と評価されたものが多くありました。

難しいのは、「自分の値が問題かどうか」の判断です。基準範囲は検査の方法や施設で違い、同じ値でも年齢・性別・持病・飲んでいる薬で意味が変わります。AIは結果用紙に書かれていない事情を知りませんし、研究では足りない情報を聞き返すこともしていませんでした。

そこで、聞く前に「AIに頼むこと」と「人に聞くこと」を分けておくのが備えになります。健康の相談でAIの答えを使うときの全体の注意は、AIに病気や薬のことを聞いても大丈夫?でも整理しています。

02 研究とデータでわかっていることAIの検査結果の説明は、どこでずれる?

研究では、AIは異常の印がついた項目を見つけて説明できましたが、基準値の答えが聞くたびにぶれ、値の重さの区別や、複数の項目を合わせた判断で誤りが見られました。

26.5%同じ条件で基準値を何度も聞いたときの、下限の値のぶれ(変動係数の中央値。47項目・2025年発表)
15.8%同じく上限の値のぶれ(変動係数の中央値)
91%AIの答えの正確さを、医師ら5人が「とても高い」「高い」とした割合(7問・35件の評価、2024年発表)
16.5%異常のある結果を医師より先に見て「心配が増えた」と答えた人。正常な結果では5.0%(米国、2022年の調査)

Meyerら(2025)[1]

対話AIに、47の検査項目の基準値(正常とされる範囲の下限と上限)を同じ条件で何度も聞くと、答えは聞くたびにぶれていました。ぶれの大きさを表す変動係数(平均に対するばらつきの割合)は、中央値で下限26.5%、上限15.8%でした。

新しいモデルほどぶれは小さくなりましたが、著者らは、施設ごとの差が大きい検査項目を中心に、診断に使えないぶれが残ると結論づけています。そして、患者が自分の検査結果の解釈に対話AIを使うのは控えるよう勧め、基準範囲が示されていない質問ではAIが基準範囲を尋ねる仕組みが必要だと述べています。

対象: 1社の3つのモデルに、30歳・身長170cm・体重70kgの架空の男女の条件で計72万6,000回質問(ドイツの研究チーム) / 限界: 答えが正しいかではなく、答えのぶれを調べた研究です。

Heら(2024)[2]

ネットの質問サイトに寄せられた検査結果の質問53件にAIが答え、医師ら5人が7問分を採点しました。最も評価の高かったAIでは、正確さの評価35件のうち91%が「とても高い」「高い」でした。

一方で、その人の病歴に照らした解釈がない、誤った記述がある、根拠が示されないといった問題も見つかりました。HbA1c(過去1〜2か月の血糖の平均を表す値)が正常で血糖値だけが高い例を「糖尿病」と判断したり、ひどく低い鉄の値を単に「異常」と扱ったりした例が報告されています。著者らは、AIは用語や検査の目的の説明、医療者に聞く質問づくりに使えるが、診断や治療の助言に使うべきではないとしています。

対象: 米国の質問サイトの53問。医師らの採点は7問だけ / 限界: 主な比較はAI自身に採点させた方法で、AIに有利になりうると考えられます。

Cadamuroら(2023)[3]

欧州の臨床検査の学会の作業部会が、基準範囲と単位つきの架空の検査報告10件を対話AIに読ませました。AIはすべての項目を認識し、基準範囲から外れた値も指摘しましたが、解釈は表面的で誤りが多く、全体としてまとまった判断になっていませんでした。

基準からどのくらい外れているかを考えることはまれで、意味のある次の検査も提案できていませんでした。著者らは、個別の項目の説明はできても、全体像の判断はできないとまとめています。

対象: 架空の検査報告10件 / 限界: 2023年当時のAIで調べた研究で、今のAIでは結果が違う可能性があります。

Steitzら(2023)[4]

ネットの患者向けページで検査結果を見た患者と家族への調査では、95.7%が「すぐに見られるほうがよい」と答えました。ただし「心配が増えた」と答えた人は、異常のある結果では16.5%、正常な結果では5.0%でした。

対象: 米国の4つの大学病院の患者と家族8,139人(2022年5月の調査、回答者の年齢の中央値64歳) / 限界: AIの説明を読んだ人の調査ではありません。結果を一人で読むときの心配の目安として紹介しています。

4つの研究を合わせると、AIは「この項目は何を調べるもの?」という説明役には向き、「自分の値は問題?」という判断役には向かない、という線が見えてきます。

03 まだわかっていないこと新しいAIなら、検査結果も正しく読める?

まだ確かめられていません。AIは新しいモデルが次々に出ていますが、日本の健康診断の結果用紙を一般の人がAIに読ませたときの正確さを調べた研究は、今回調べた範囲では見当たりませんでした。

  • 基準値のぶれを調べた研究は、答えが正しいかどうかまでは比べていません。
  • 医師らが採点した研究は7問だけで、多くの質問に当てはまるかはわかりません。
  • 日本語の結果用紙や、日本の健診の判定区分(「要再検査」など)をAIがどう扱うかの研究も、今回調べた範囲では見当たりませんでした。
  • AIの説明を読んだ人が、受診を早めたのか遅らせたのかを調べた研究はまだ少ない状態です。

04 今日からできること結果をAIに聞く前に、何を決めておく?

基準範囲は結果用紙のものを使い、AIには用語の説明と質問づくりだけを頼み、受診の判断は結果用紙の指示と医師に任せる。この3つを先に決めておきます。

1

基準範囲と単位も一緒に渡す

項目名と値だけでなく、結果用紙に書かれた基準範囲と単位も添えます。AIに基準値を聞いて比べるのはやめ、用紙の範囲を正とします。氏名・生年月日・受診番号は隠してから渡します。

目安 1回5分

2

頼むのは「説明」と「質問づくり」だけにする

「この項目は何を調べる検査?」「高いとき、低いときに一般に考えられることは?」「医師に聞くとよい質問を3つ」のように頼みます。「病気かどうか判断して」とは頼みません。

目安 1項目につき1〜2回の質問

3

判定の指示を先に読み、AIの答えで上書きしない

「要再検査」「要精密検査」などの指示があれば、AIが「心配ない」と答えても指示を優先します。迷ったら健診機関やかかりつけ医に電話で聞きます。

目安 結果が届いた日に1回

4

AIに伝えていない事情を書き出しておく

持病、飲んでいる薬やサプリ、前回の値、検査前の食事など、値の意味を変えうることをメモします。AIの答えではなく、このメモを受診のときに見せます。

目安 5分

AIの答えを信じて受診を先延ばしにしてしまったときは、AIに「様子を見て大丈夫」と言われたけれど不安が残るときの記事が参考になります。AIで調べたことを医師に言い出しにくい場合は、AIの健康アドバイスを医師に伝えるときも読んでみてください。

05よくある質問

健康診断の結果をAIに聞いても、医師に聞くのと同じくらい正確?

同じとは言えません。研究では、1つの項目の説明はおおむね正確と評価された一方で、その人の持病や薬などの事情を踏まえない答えや、誤った説明も見つかりました。値の意味をどう受け止めるかは、医師や健診機関に確かめます。

AIに「基準値はいくつ?」と聞いてはいけない?

目安を知る程度ならよいのですが、自分の結果の判断には使いません。AIが示す基準値は同じ質問でも聞くたびにぶれ、基準範囲は検査の方法や施設でも変わります。結果用紙に書かれた基準範囲を正として、それと一緒に渡します。

結果用紙の写真をそのままAIに読ませてもいい?

読ませる前に、氏名・生年月日・受診番号・住所などは隠すか切り取ります。健康の情報は特に慎重に扱いたい個人情報です。必要なのは項目名・値・単位・基準範囲だけです。AIの相談サービスに健康のことを書く前の確かめ方は、AIの相談アプリに体調を書く前に確かめることで整理しています。

AIに「様子見でよい」と言われたら、受診しなくていい?

AIの答えだけで受診をやめないでください。結果用紙に「要再検査」「要精密検査」とあれば、その指示が優先です。迷うときは健診機関やかかりつけ医に電話で聞けます。

「AIに頼りすぎ」を順に読む
知る → 備える(この記事) → 起きたとき → 立て直す
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出典

  1. Meyer A, Schömig E, Streichert T (2025). ChatGPT and reference intervals: a comparative analysis of repeatability in GPT-3.5 Turbo, GPT-4, and GPT-4o. Frontiers in Artificial Intelligence, 8. https://doi.org/10.3389/frai.2025.1681979
  2. He Z, Bhasuran B, Jin Q, et al. (2024). Quality of Answers of Generative Large Language Models Versus Peer Users for Interpreting Laboratory Test Results for Lay Patients: Evaluation Study. Journal of Medical Internet Research, 26, e56655. https://doi.org/10.2196/56655
  3. Cadamuro J, Cabitza F, Debeljak Z, et al. (2023). Potentials and pitfalls of ChatGPT and natural-language artificial intelligence models for the understanding of laboratory medicine test results. An assessment by the European Federation of Clinical Chemistry and Laboratory Medicine (EFLM) Working Group on Artificial Intelligence (WG-AI). Clinical Chemistry and Laboratory Medicine, 61(7), 1158-1166. https://doi.org/10.1515/cclm-2023-0355
  4. Steitz BD, Turer RW, Lin CT, et al. (2023). Perspectives of Patients About Immediate Access to Test Results Through an Online Patient Portal. JAMA Network Open, 6(3), e233572. https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2023.3572