AIの健康アドバイスで自己判断していたことを、医師に言い出しにくい。研究では、黙っていた理由の多くは「責められたくない」で、伝え方しだいで関係はむしろ良くなっていた

AIに体の不調や薬のことを聞いて、その答えをもとに自分で判断していた。あとになって、それを医師に言い出しにくくなっている。そう感じるのは、あなただけではありません。研究では、医師に大事なことを黙っていた理由の多くは「責められたくない」「恥ずかしい」で、ネットで調べたことを医師と話した人の約7割が、関係に良い影響があったと答えた研究もありました。
3行でわかる
- 米国の2つの調査では、6〜8割の人が医師に大事なことを少なくとも1つ黙っていたことがあり、いちばん多い理由は「責められたり説教されたりしたくない」でした。
- ネットの健康情報と医師との関係を調べた18本の研究のまとめでは、調べたことを医師と話し合うかどうかが、関係が良くなるかどうかの分かれ目でした。
- 受診の前に「いつ・何を・なぜ変えたか」を短いメモにし、診察の最初に事実として伝えます。質問を書いて持っていく方法は、がん患者の試験のまとめで質問しやすさを高めていました。
01 結論から言うとAIで自己判断したことは、医師に言うべき?
自己判断で薬・量・通院・生活を変えていたなら、その事実は医師に伝えたほうが安全です。研究では、黙る理由の多くは「責められたくない」気持ちで、伝えたこと自体が関係を悪くするとは限りませんでした。
言い出しにくいのは、「勝手なことをした」と思われたくないからです。その気持ちは自然なものです。
ただ、医師は、あなたが実際にどうしているかをもとに次の判断をします。薬の飲み方を変えていたのに伝えないと、効いていない、または合っていないと受け取られることがあります。
この記事は、自己判断をしてしまった「あと」の、医師との関係の立て直し方を書きます。AIの健康アドバイスの正確さはAIに病気や薬のことを聞いても大丈夫?に、AIに「様子を見て大丈夫」と言われて不安なときのことはAIに症状を相談したら「様子を見て大丈夫」と言われたにまとめています。
02 研究とデータでわかっていること医師に言い出せない人は多い?
多くいます。米国の調査では、医師に大事なことを1つ以上黙っていた人が、若い層で81%、年長の層で61%でした。一方で、調べたことを医師と話し合った人では、関係が良くなったと答えた研究がありました。
Ayo-Ajibolaら(2024)[1]
米国の研究参加登録サイトの登録者2,406人に、2023年6〜8月に聞いた調査です。21.5%がChatGPTを健康の情報に使っており、使った理由で多かったのは「受診が必要かどうか知るため」(47.4%)と「別の治療法を探すため」(46.2%)でした。ChatGPTの情報をきっかけに、医師に専門の科への紹介を求めた人は35.6%、薬を変えた、または新しい薬や別の薬を求めた人は31%でした(論文の中で、この項目の書き方が分かれています)。答えを疑ったことがある人は67.9%で、67.5%は情報を医師に見せていました。
対象: 米国の18歳以上。使っていた人の平均年齢は32.8歳 / 限界: 自分で答える調査で、登録者の中から答えた人だけの結果。日本の人に当てはまるかはわからない。
Levyら(2018)[2]
米国のネット調査2つ(2,011人・平均36歳と、2,499人・平均61歳)で、医師に黙っていたことを聞きました。1つ以上黙っていた人は81.1%と61.4%でした。多かったのは「医師の勧めに賛成できなかった」ことと「説明がわからなかった」ことです。黙っていたことに挙げられた理由の割合では、「責められたり説教されたりしたくない」(81.8%・64.1%)、「その行動がどれだけ体に悪いか聞きたくない」(75.7%・61.1%)、「恥ずかしい」(60.9%・49.9%)が上位でした。
対象: 米国の成人。参加者を無作為に選んだ調査ではない / 限界: 2015年の調査で、AIの登場より前。何を黙っていたかは本人の申告。
Tan・Goonawardene(2017)[3]
ネットで健康の情報を調べることが、医師との関係にどう影響するかを調べた18本の研究のまとめです。患者が話さない理由で多かったのは、医師の意見に挑戦していると思われる不安、医師に失礼ではという気持ち、恥ずかしさ、そして医師側の否定的な態度でした。話し合いをした場合は、医師が「挑戦された」という態度を見せない限り、関係に良い影響が出やすいとされていました。「ネットで見た」とは言わずに質問する、黙って医師の説明と照らし合わせる、といった遠回しな伝え方も紹介されていました。このまとめが紹介している研究の1つでは、調べたことを医師と話した人の71.7%が、関係に良い影響があったと答えていました。
対象: 2000〜2015年に発表された英語の研究 / 限界: 生成AIより前のネット検索の研究で、多くは調査や聞き取り。
Li・Wang(2022)[4]
中国の患者818人の調査です。人と話すことへの緊張が小さい人ほど、ネットで調べたことを医師に直接伝えていました。直接伝えるほど医師の反応を好意的に感じ、受診への満足度も高い関係がありました。
対象: ネット調査に答えた1,537人(平均約31歳)のうち、受診でネットの情報を使った818人 / 限界: 一度きりの調査で、伝え方が満足度を高めたという因果はわからない。
米国の48人の聞き取りでは、比較的学歴や収入の高い人でも、「面倒な患者」と思われる不安から、医師に意見を言いにくいと感じていました。[5] 言い出しにくさは、知識や性格の問題ではなく、診察室の関係から生まれやすいものです。
03 まだわかっていないこと「AIで調べた」と伝えると医師の受け止めは変わる?
AIの健康アドバイスで自己判断したことを、医師に伝えたあと関係がどう変わるかを直接調べた研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。研究の多くは、生成AIより前のネット検索についてのものです。
- 「ネットで調べた」と「AIに聞いた」で、医師の受け止め方が違うかどうかはわかっていません。
- 研究の多くは米国や中国の調査で、日本の診察の場にそのまま当てはまるかは確かめられていません。
- どんな伝え方がいちばん関係を良くするかを、実験で比べた研究は少ない状況です。
- 質問を書いて持っていく方法の研究は、主にがん患者を対象にしたものです。
04 今日からできることどう伝えれば、責められにくい?
受診の前に「いつ・何を・なぜ変えたか」をメモにして、診察の最初に事実として伝えます。言い訳や謝罪を長くするより、今の状態と聞きたいことを短く伝えるほうが、医師も判断しやすくなります。
「いつ・何を・なぜ」を3行のメモにする
例えば「9月から、AIの答えを見て薬を1日1回に減らした。眠気がつらかったから。今は〇〇の症状がある」のように書きます。AIの画面を残しているなら、それも見せられるようにしておきます。
目安 5分
診察の最初に、事実から切り出す
「先にお伝えしたいことがあります」と始め、メモを読むか、そのまま渡します。最後に回すと、時間切れで言えないことがあります。研究でも、時間が足りないことは話せない理由の1つでした。
目安 最初の1分
聞きたいことを1〜3個、質問の形で書いておく
「今の飲み方を続けていいですか」「元に戻すなら、どうすればいいですか」など、優先順に書きます。質問を書いて持っていく方法は、がん患者の14本の試験のまとめで、質問の数と話し合いへの参加を増やしていました。[6]
目安 5分
次からは、変える前に聞く順番にする
AIの答えは「受診で聞きたいことのメモ」にとどめ、薬や治療を変える前に、医師か薬剤師に確かめます。自分を責めるより、次の順番を決めておくほうが、同じ迷いを減らせます。
目安 次にAIで調べたとき
急な体調の悪化や、薬をやめたあとに強い症状が出ているときは、次の受診を待たずに医療機関に相談してください。この記事は、薬の飲み方や治療についての助言ではありません。
AIの答えで失敗して、AIそのものが怖くなったときの考え方は、AIの答えで失敗してから、AIを使うのが怖いにまとめています。
05よくある質問
AIで調べて薬の飲み方を自分で変えていたことを、医師に言うと怒られる?
反応は医師によって違いますが、研究のまとめでは、ネットで調べたことを伝えた患者の多くが「関係に良い影響があった」と答えた研究もありました。伝えないままのほうが、医師は今の状態をもとに判断できません。何をいつから変えたかを事実として短く伝えるのが、責められにくい伝え方でもあります。
「AIに聞いた」とは言わずに、質問だけしてもいい?
質問の形で聞くことは、研究のまとめでも患者がとる伝え方の1つとして紹介されています。ただ、すでに薬や生活を自分で変えているなら、その事実は伝えたほうが安全です。AIの名前を出すかどうかより、「何をしたか」を伝えることが大切です。
医師の反応がきつくて、もう通いにくい。どうすればいい?
研究のまとめが紹介している研究では、医師が「挑戦された」と感じているように見えたとき、患者の49%が診察に強い不満を感じていました。気まずさが続くなら、看護師や薬剤師に相談する、別の医療機関の意見を聞くといった選び方もあります。通院をやめてしまう前に、相談先を変えることを考えてみてください。
次からAIで健康のことを調べるのはやめたほうがいい?
やめる必要があるとは言えません。米国の調査では、AIで調べた人の約7割がその内容を医師に見せていました。AIの答えは「受診で聞きたいことのメモ」に使い、薬や治療を変える前に医師か薬剤師に確かめる、という順番にすると、自己判断で迷うことが減らせます。
出典
- Ayo-Ajibola O, Davis RJ, Lin ME, Riddell J, Kravitz RL (2024). Characterizing the Adoption and Experiences of Users of Artificial Intelligence-Generated Health Information in the United States: Cross-Sectional Questionnaire Study. Journal of Medical Internet Research, 26, e55138. https://doi.org/10.2196/55138
- Levy AG, Scherer AM, Zikmund-Fisher BJ, Larkin K, Barnes GD, Fagerlin A (2018). Prevalence of and Factors Associated With Patient Nondisclosure of Medically Relevant Information to Clinicians. JAMA Network Open, 1(7), e185293. https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2018.5293
- Tan SS, Goonawardene N (2017). Internet Health Information Seeking and the Patient-Physician Relationship: A Systematic Review. Journal of Medical Internet Research, 19(1), e9. https://doi.org/10.2196/jmir.5729
- Li S, Wang K (2022). Sharing Online Health Information With Physicians: Understanding the Associations Among Patient Characteristics, Directness of Sharing, and Physician-Patient Relationship. Frontiers in Psychology, 13, 839723. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2022.839723
- Frosch DL, May SG, Rendle KA, Tietbohl C, Elwyn G (2012). Authoritarian physicians and patients' fear of being labeled 'difficult' among key obstacles to shared decision making. Health Affairs, 31(5), 1030-1038. https://doi.org/10.1377/hlthaff.2011.0576
- Han R, Liu J, Chen J, Ding J, Gu C, Gong N, Xiao J (2025). Effectiveness of question prompt list interventions for patients with cancer: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Asia-Pacific Journal of Oncology Nursing, 12, 100765. https://doi.org/10.1016/j.apjon.2025.100765


