AIの英会話・作文アプリに、自分の声や作文を送っても大丈夫?研究では、短い録音にも気分の手がかりが含まれ、「情報を守ります」の一文だけで安心感が大きく上がっていた。使う前に、誰のアカウントかと学習の設定を確かめる

英語の授業で、AIの英会話アプリに話しかける課題が出た。作文をAIに添削してもらう宿題もある。自分の声や書いた文章がどこに送られ、何に使われるのか、気になる人は少なくありません。研究では、短い録音にもその人の気分の手がかりが含まれ、「情報を守ります」という説明を読むだけで安心感が大きく上がることがわかっています。使う前に確かめたいのは、誰のアカウントで使うのかと、送ったものが学習に使われる設定かどうかです。
3行でわかる
- 934人の研究では、日常の短い録音から、話した内容と話し方をもとに、その時の気分をある程度読み取れました。声には、話した言葉以上の情報が含まれます。
- 大学生768人の実験では、「個人の情報を守ります」という短い説明があるだけで、守られていると感じる度合いが大きく上がりました。説明の安心感と、実際の扱いは別に確かめる必要があります。
- 使う前に、学校が用意したアカウントか自分のものかを先生に確かめ、設定で学習への利用と履歴の保存を見ておきます。作文や会話には、本名・学校名・家族の話を入れないと決めておきます。
01 結論から言うとAIの英会話・作文アプリに、声や作文を送っても大丈夫?
使い方しだいです。送った声や作文がどう保存され、学習に使われるかは、アプリと使うアカウントで変わります。使う前に、誰のアカウントか・学習への利用の設定・入れない情報の3つを確かめれば、心配はかなり減らせます。
英会話や作文のアプリは、声や文章を受け取らないと動きません。送ること自体を避けるより、何を送るかと、送ったものがどう扱われるかを先に知っておくほうが現実的です。
特に気をつけたいのは次の3つです。
- 学校が契約したアカウントか、自分や家族の個人アカウントか
- 送った声や作文を、サービスの改善や学習に使う設定になっていないか
- 作文や会話の中に、本名・学校名・住所・家族や友達の話を入れていないか
学校で生成AIを使うときの国の指針の考え方(年齢・入力しない情報・答えの確かめ方)は「学校で生成AIを使う前に、生徒が知っておきたいこと」にまとめています。この記事は、その中でも声と作文を送る場面に絞った話です。
02 研究とデータでわかっていること声や作文から、どこまで自分のことがわかる?
研究では、短い録音からその時の気分をある程度読み取れ、学習に使われた文章は、そのままでなくても似た断片からAIに覚えられることがありました。また、安心させる説明は、中身を確かめなくても安心感を大きく上げていました。
Kochら(2026)[1]
参加者が日常の中で、スマホに「今の状況と考えと気持ち」を短く話して録音しました。録音から取り出した、話した内容と話し方の特徴をもとに、本人が答えた気分を予測すると、初めて見る人の録音でも満足感や悲しさなどを、ある程度当てられました。いちばん手がかりになったのは、話した内容でした。
対象: 934人の録音12,285件 / 限界: 気持ちを話すよう頼んだ録音で、英会話の練習のような録音で同じように読み取れるかはわかりません。予測は「ある程度」で、正確に当てられるわけではありません。
Zhangら(2026)[2]
大学生に、悩みの相談にも使えるAIチャットの説明文を読んでもらいました。説明文に「個人の情報の収集を最小限にし、目的外に使わない」といった一文があると、その一文がない場合より、情報が守られていると感じる度合いが大きく上がりました(d=0.91)。
対象: 中国の研究チームによる大学生768人の実験(2026年3〜4月) / 限界: 架空の説明文を読んだ反応です。実際のアプリで、説明のとおりに情報が守られているかを調べたものではありません。
Shilovら(2026)[3]
AIの学習データに、ある文章と、それを少し書き換えた似た文章を入れて、AIがどれだけ元の文章を覚えるかを調べました。10%を入れ替えた似た文章でも、まったく同じ文章の0.60〜0.65倍ほど、元の文章を覚えさせていました。半分を入れ替えた文章でも、0.13〜0.19倍の効果が残りました。
対象: 4つの公開AIモデル(GPT-Neo、Gemma、Phi-2、Llama) / 限界: 研究用に用意した文章での実験です。生徒の作文が実際に学習され、ほかの人に出てくるかを示したものではありません。
研究を、声や作文を送る前の疑問に当てはめると、次のとおりです。
| 気になること | 研究でわかったこと |
|---|---|
| 声を送るだけなら、言葉の中身しか伝わらない? | 短い録音から、その時の気分の手がかりがある程度読み取れた[1] |
| 「安全です」と書いてあれば大丈夫? | 説明の一文だけで安心感は大きく上がるが、実際の扱いとは別[2] |
| 少し書き換えれば、覚えられない? | 似た文章でも、AIは元の文章を覚えることがあった[3] |
03 まだわかっていないこと英会話・作文アプリに送った声は、実際どう使われている?
まだよくわかっていません。生徒が英会話や作文のAIアプリに送った声や文章が、実際にどう保存され、学習に使われているかを調べた査読つきの研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。扱いはアプリと契約によって違います。
- 英会話の練習の録音から、話し手の気分や体調などがどこまで読み取れるかは、研究されていません。
- 学校が契約したアカウントと、個人の無料アカウントで、扱いがどれだけ違うかを比べた研究も見つかりませんでした。
- 研究の多くは海外の大人や大学生が対象で、日本の小中高生を対象にした研究は見当たりませんでした。
04 今日からできること授業で使う前に、何を確かめておく?
誰のアカウントで使うかを先生に聞き、設定で学習への利用と履歴の保存を確かめ、作文と会話に入れない情報を決めておきます。どれも5〜15分ほどで、お金はかかりません。
学校のアカウントか、自分のアカウントかを先生に聞く
授業で使うアプリが、学校が用意したアカウントか、自分や家族のアカウントで使うものかを確かめます。個人のアカウントで使うよう言われたら、家の人と一緒に次の2を見ます。
目安 5分
設定とプライバシーの説明で、学習への利用と履歴を見る
設定画面やプライバシーの説明で、「サービスの改善に使う」「学習に使う」「履歴を保存する」といった項目を探します。安心させる一文だけで判断せず、オンかオフか、どこで変えられるかを見ておきます。
目安 15分
作文と会話に入れない情報を決めておく
本名、学校名、住所、家族や友達の名前、病気や悩みは入れないと決めます。英作文で自分のことを書く課題でも、名前や場所は「my town」「my friend」のように置きかえられます。
目安 5分
録音は、課題の内容だけを話す
録音の前後に、ほかの人の声や雑談が入らないようにします。課題と関係のない気持ちや悩みを話したくなったら、AIではなく、先生や家の人に話します。
目安 録音1回ごと
終わったら、残す必要のない履歴を消す
提出が終わって残す必要がなくなった会話や録音は、アプリの履歴から削除します。削除の方法がわからないときは、アプリの公式ヘルプで確かめます。
目安 5分
授業でAIをどこまで使ってよいかを先生と合わせておく方法は「授業でAIをどこまで使っていいか、先生と考えがずれていないか不安」、生成AIは何歳から使えるかは「生成AIは何歳から使える?」にまとめています。
05よくある質問
英会話アプリに送った声で、なりすましの音声を作られることはある?
声をまねるAIはあります。このメディアの別の記事で紹介した研究では、約4分の録音から作ったAIの声を、聞き手は本物の声と区別できませんでした。ただ、学校の課題で送った声が実際にそう使われたという研究は見つかっていません。課題の内容だけを話し、録音を公開の場に載せないようにすると安心です。声の素材を出すときの考え方は「自分の声や歌をAIの素材に提供する前に」も参考になります。
先生に言われたアプリなら、設定は確かめなくていい?
学校が用意したアカウントでも、送った声や作文がどう扱われるか、どの設定で使うかは、先生に聞いておくと安心です。自分や家族のアカウントで使う場合は、学習への利用や履歴の保存の設定を、自分で確かめる必要があります。
作文に自分の体験を書きたいときは、どうすればいい?
体験の中身は書いてかまいません。名前・学校名・地名などの、自分や周りの人がわかる部分だけを、別の言葉に置きかえます。提出する本番の作文には本当の名前を入れても、AIに添削してもらう版では置きかえておく、という分け方もできます。
出典
- Koch TK, Harari GM, Gosling SD, Marrero Z, Schoedel R, Bühner M, Stachl C (2026). Brief speech samples reveal emotional states in daily life. PNAS Nexus, 5(8), pgag263. https://doi.org/10.1093/pnasnexus/pgag263
- Zhang Z, Lu X, Zhang Y, Zhang H, Zhang M (2026). Privacy assurances and professional-boundary warnings in generative AI mental health chatbots: a randomized vignette experiment on calibrated trust, overreliance risk, and professional help-seeking intentions. Frontiers in Psychology, 17, 1934264. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1934264
- Shilov I, Meeus M, de Montjoye YA (2026). The mosaic memory of large language models. Nature Communications, 17, 2142. https://doi.org/10.1038/s41467-026-68603-0


