SNSのおすすめに、怒りや対立をあおる投稿ばかり流れてきて疲れそう。研究では、おすすめの表示は時間順より怒りの投稿を多く選んでいて、見るものを先に決めておくことが備えの候補になる

SNSを開くと、だれかを責める投稿や、言い争いの切り抜きが次々に流れてくる。見ているだけで気持ちがざわつき、閉じたあともイライラが残る。そうなる前にできる備えを、おすすめの仕組みを調べた研究から整理します。結論は「おすすめに任せる時間を減らし、見るものを先に決める」です。
3行でわかる
- 米国のTwitter(現X)利用者806人の研究では、反応をもとに選ぶおすすめの表示は、フォロー中の人の投稿を新しい順に並べた表示より、怒りを表す投稿を多く選んでいました。
- おすすめの投稿を読んだ人は怒りや不安を強く感じ、政治の投稿については「こういう投稿を見たい」と答える度合いが、新しい順の表示より低くなっていました。
- 備えは、開く前に見るものを決める、フォロー中の新しい順で見る、怒りの投稿に返信や引用で反応しない、の3つです。効果を直接確かめた研究はまだありません。
01 結論から言うと怒りの投稿ばかり流れてくるのはなぜ?
おすすめのAIが「反応されそうな投稿」を選んでいるためと考えられます。怒りや対立の投稿は反応を集めやすく、おすすめで表示が増えることが研究で示されています。政治の投稿では、本人が「見たい」と答える度合いの低い投稿が選ばれていました。
多くのSNSのおすすめは、AI(機械学習)が「この人がこの投稿に反応するか」を予測して並べています。研究の論文によると、2023年4月時点のTwitterのおすすめは、リポスト、返信、動画の視聴、2分以上その投稿で手を止めることなど、10種類の反応を予測して選んでいました[1]。
一方で、人は怒りや否定的な言葉に反応しやすいことがわかっています。反応を手がかりにするAIは、その傾向を拾ってしまいます。つまり、怒りの投稿が増えるのは、あなたが怒りを求めているからとは限りません。「つい見てしまう」「つい返信してしまう」という反応が、おすすめの材料になっている可能性があります。
見た目の投稿が増えて比べてしまう場合の備えは、SNSのおすすめに見た目の投稿が増えて、比べて落ち込みそうで整理しています。この記事は、怒りや対立の投稿に絞ります。
02 研究とデータでわかっていることおすすめの表示で、気分は変わる?
変わる可能性があります。米国の研究では、おすすめの投稿を読んだ人は、新しい順の投稿を読んだときより怒り・悲しみ・不安を強く感じていました。ただし測ったのは読んだ直後の気分です。
Milli ら(2025)[1]
反応をもとに選ぶおすすめの表示は、フォロー中の人の投稿を新しい順に並べた表示より、怒り・悲しみ・不安を表す投稿を多く選んでいました。特に差が大きかったのは怒りです。読んだ人も、怒り・悲しみ・不安・うれしさのすべてを強く感じていました。政治の投稿に限ると、おすすめが選んだ投稿は対立する相手への敵意を多く含み、読んだ人は相手の陣営を悪く感じていました。
対象: 米国のTwitter利用者806人(2023年2月11〜27日、事前登録あり) / 限界: ある一時点の比較で、長く使い続けたときの影響は測っていません。参加者は18〜34歳が53%と、利用者全体より若い傾向がありました。
同じ研究では、表示された投稿の一つずつに「こういう投稿を見たいか」も聞いています。全体では、おすすめの投稿のほうがわずかに高く評価されました。ところが政治の投稿に限ると、おすすめが選んだ投稿は、新しい順の投稿より「見たい」と答える度合いが低かったのです[1]。
研究者たちは試しに、本人が「見たい」と答えた投稿を上から並べ直した表示も作りました。すると、怒りや悲しみ、不安を表す投稿が減り、うれしさを表す投稿が増えました。対立をあおる投稿も減りましたが、それはほぼ、対立する陣営の投稿そのものが減ったためで、考えの近い投稿ばかりになる心配もあると論文は書いています。
Rathje ら(2021)[2]
対立する政治の相手について書いた投稿は、自分の側について書いた投稿の約2倍共有されていました。相手を指す言葉が1つ増えるごとに、共有されるオッズは67%上がりました。相手についての言葉は、Facebookの「怒り」のリアクションを強く予測していました。
対象: 米国のニュースメディアと連邦議員のFacebook・Twitterの投稿、計2,730,215件 / 限界: 投稿の特徴と反応の関連を見た分析で、読んだ人の気分は測っていません。
Robertson ら(2023)[3]
同じ記事に複数の見出しを試したデータでは、否定的な言葉が多い見出しほどクリックされていました。平均的な長さの見出しで、否定的な言葉が1つ増えるごとにクリックされる割合は2.3%上がりました。
対象: 米国のニュースサイトUpworthyで2013〜2015年に行われた22,743件の見出しの比較実験(表示は3億7,000万回超) / 限界: 記事ごとの集計で、個人の気持ちはわかりません。また、SNSのおすすめではなく見出しの研究です。
3つの研究をまとめると、次の流れが見えてきます。
- 人は、否定的な言葉や対立する相手についての投稿に反応しやすい[2][3]。
- 反応を予測して選ぶおすすめは、その傾向を拾い、怒りの投稿を多く表示する[1]。
- その結果、読む人は怒りを強く感じるが、政治の投稿については本人が望む投稿とずれている[1]。
03 まだわかっていないこと表示を変えれば、疲れは減る?
まだわかっていません。読んだ直後の気分の差は示されていますが、表示を変え続けて疲れやストレスが減るかを確かめた研究は、今回の調査では見つかりませんでした。
- 研究で測ったのは、上から10件ずつを読んだ直後の気分です。毎日使い続けたときに、気分や疲れがどう変わるかはわかっていません。
- 対象は米国のTwitter利用者で、2023年の仕組みです。日本の利用者や、ほかのSNS、今のおすすめの仕組みに同じ結果が当てはまるかは確かめられていません。
- 見たいものだけを並べると、考えの近い投稿ばかりになる心配があり、その影響はまだ調べられている途中です。
- 怒りの投稿を見たあとのイライラが、どれくらい続くのかも、この研究ではわかりません。
つまり「表示を変えれば楽になる」とは言い切れません。ただ、おすすめが選ぶ投稿と、自分が見たい投稿がずれることがある、という点は研究で示されています。そのずれを小さくするのが、この記事の備え方です。
04 今日からできること疲れる前に、何を決めておけばいい?
開く前に見たいものを1つ決めること、フォロー中の新しい順で見る時間をつくること、怒りの投稿に返信や引用で反応しないことの3つです。どれもお金はかからず、数分で始められます。
開く前に「何を見に行くか」を1つ決める
「友だちの近況」「趣味の情報」など、見たいものを先に決めてから開きます。研究で、本人が「見たい」と答えた投稿の並びは、怒りの投稿が少なかったことにならった方法です。見終わったら閉じます。
目安 開く前に10秒
フォロー中の人の投稿を、新しい順で見る時間をつくる
使っているSNSに、フォローしている相手の投稿だけを新しい順に表示する画面があるか、アプリの公式ヘルプで確かめます。設定の場所や名前はアプリと時期で変わるため、公式の案内に従ってください。
目安 確かめるのに5分
怒りの投稿には、返信・引用・長い見入りをしない
返信や手を止めて見続けることも、おすすめの材料になりえます。腹が立つ投稿は、反応する前にスクロールで通り過ぎます。表示を減らしたいときは、「興味がない」やミュートなど、そのアプリにある機能を使います。
目安 その場で数秒
見たあとの気分を3日だけメモする
閉じたときに「怒り・不安・ふつう・楽しい」のどれに近いかを1行で書きます。研究も、読んだあとの気分を同じように聞いていました。怒りが続く時間帯やアプリがわかれば、見る時間を変える目安になります。
目安 1回10秒を3日
ニュースを追いすぎて気分が沈むときの距離の取り方は、姉妹メディアの暗いニュースばかり見てしまう、やめたいにまとめています。生々しい事件の動画が流れてくるのが怖いときは、事件や災害の生々しい動画が、SNSで流れてきそうで怖いも参考になります。
05よくある質問
SNSで怒りの投稿ばかり表示されるのは、自分が怒りっぽいから?
そうとは限りません。米国の研究では、反応をもとに選ぶおすすめは、フォロー中の人の投稿を新しい順に並べた表示より、怒りを表す投稿を多く選んでいました。政治の投稿では、本人が「見たい」と答える度合いが新しい順の表示より低く、望んでいないのに表示されている面がありました。
おすすめをやめて、新しい順の表示にすれば疲れなくなる?
まだわかっていません。研究で示されたのは、読んだ直後に感じる怒りや不安の差です。新しい順で見続けたときに疲れやストレスが減るかは、確かめられていません。新しい順でも、フォローしている相手が怒りの投稿をすれば表示されます。
怒りの投稿に反論すると、もっと表示される?
可能性はあります。研究の論文によると、2023年時点のTwitterのおすすめは、返信やリポスト、投稿で手を止めることなどの反応を予測して表示を選んでいました。反論の返信も反応の一つです。ただ、自分の一つの返信で表示がどれだけ変わるかは、研究ではわかっていません。
SNSのおすすめは、どうやって投稿を選んでいるの?
多くのSNSでは、AI(機械学習)が「この人がこの投稿に反応するか」を予測して並べています。手がかりにする反応の種類はSNSや時期によって違い、すべては公開されていません。使っているSNSの公式ヘルプで、表示の仕組みや選べる表示の種類を確かめるのが確実です。
出典
- Milli S, Carroll M, Wang Y, Pandey S, Zhao S, Dragan AD (2025). Engagement, user satisfaction, and the amplification of divisive content on social media. PNAS Nexus, 4(3), pgaf062. https://doi.org/10.1093/pnasnexus/pgaf062
- Rathje S, Van Bavel JJ, van der Linden S (2021). Out-group animosity drives engagement on social media. Proceedings of the National Academy of Sciences, 118(26), e2024292118. https://doi.org/10.1073/pnas.2024292118
- Robertson CE, Pröllochs N, Schwarzenegger K, Pärnamets P, Van Bavel JJ, Feuerriegel S (2023). Negativity drives online news consumption. Nature Human Behaviour, 7(5), 812-822. https://doi.org/10.1038/s41562-023-01538-4


