AIの肌チェックやチャットAIに、ほくろを「がんの疑い」と言われて怖い。研究では、アプリが「高リスク」とした画像の約3分の1は皮膚科医の確認で「低リスク」に戻っていて、まず皮膚科で診てもらう

気になっていたほくろを、AIの肌チェックやチャットAIに見せたら「がんの疑い」「高リスク」と出た。画面の言葉が頭から離れず、怖くなりますよね。研究では、AIが「高リスク」とした皮膚の画像のうち、皮膚科医が見直すと「低リスク」に戻るものが少なくありませんでした。一方で、本当に治療が必要なものが見つかることもあります。結果が出たあとに、何をすればいいかを整理します。
3行でわかる
- AIの「高リスク」は、がんという診断ではありません。オランダの研究では、アプリが高リスクとした画像の33.8%を、皮膚科医が低リスクに直していました。
- 逆に「低リスク」も安心の証明ではありません。病院での検証では、がんや前がん病変の13.1%がアプリで低リスクと判定されていました。
- 結果が出たら、写真と「いつから・どう変わったか」のメモを持って皮膚科へ。自分で取ったり、何度もAIに聞き直したりはしません。
01 結論から言うとAIに「がんの疑い」と言われたら、がんなの?
がんと決まったわけではありません。AIの「高リスク」は「医師に見てもらったほうがいい」という目安で、研究では、約3分の1が皮膚科医の確認で低リスクに直されていました。ただ、見逃しを防ぐためにも、自分で判断せず皮膚科で診てもらうのが確かです。
研究で調べられた皮膚がんチェックのアプリは、高リスクのときは「医師に見てもらう」、低リスクのときは「様子を見る」とすすめる仕組みでした[2]。がんを見逃さないことを重視すると、良性のものにも「念のため」の高リスクが出やすくなります。
チャットAIに写真を見せた場合も同じです。チャットAIは診断のための道具ではなく、答えの確かさもAIや研究ごとに大きくばらつきます[4]。この記事では、結果が出た「あと」にすることを中心に書きます。AIの説明を信じすぎてしまう仕組みは、詳しくない分野ほど、AIの説明を信じすぎてしまう?で整理しています。
02 研究とデータでわかっていることAIの皮膚の判定は、どのくらい当たるの?
がんを見つける力はある程度ありますが、良性のものを「高リスク」とすることがよくあります。一般の人が使った研究では、高リスクの判定の約3分の1が皮膚科医の確認で低リスクに直され、良性のできものでの受診が増えていました。
Smak Gregoorら / npj Digital Medicine(2023)[1]
オランダの保険会社が2019年に、成人220万人に皮膚がんチェックのアプリを無料で提供しました。使った18,960人の64,128回の判定のうち、23.5%が「高リスク」でした。その高リスクの33.8%は、遠隔で確認した皮膚科医が低リスクに直しました。逆に低リスクの2.8%は高リスクに直されました。アプリを使った人は、前がん病変やがんの請求が使っていない人より多く(6.0%と4.6%)、良性のできものやほくろの請求はさらに大きく増えていました(5.9%と1.7%)。
対象: アプリを使った18,960人と、条件をそろえた使っていない56,880人 / 限界: 保険の請求データの分析で、受診した理由や本人の不安は調べていない。
Sangersら / Dermatology(2022)[2]
オランダの病院で、372人の785個の皮膚のできものを同じアプリで判定し、病理検査や皮膚科医の診断と比べました。がんや前がん病変275個のうち86.9%を高リスクと判定しましたが、13.1%(36個)は低リスクとされ、その中にはメラノーマ(皮膚がんの一種)も3個含まれていました。良性のものを正しく低リスクとした割合は70.4%でした。
対象: 皮膚科を受診した成人(年齢の中央値71歳)。撮影は研究者が行った / 限界: 一般の人が自分で撮ると、結果が変わる可能性がある。
Freemanら / BMJ(2020)[3]
皮膚がんのリスクを判定するアプリを調べた9件の研究をまとめました。研究は小さく、方法にも問題が多く、どの研究も撮影したのは医療者でした。著者らは、今のアプリでは、メラノーマなどの皮膚がんをすべて見つけられるとは言えないと結論しています。
対象: 2019年4月までの9件の研究 / 限界: 当時のアプリの研究で、新しいアプリの性能は含まない。
Boostaniら / JAAD International(2025)[4]
ハンガリーの大学病院の381人の807枚の写真を、2つのチャットAIに見せました。皮膚の拡大写真では、一方のAIはメラノーマの96.5%を言い当てましたが、「メラノーマ」と答えたうち実際にそうだったのは48.3%でした。もう一方のAIは、メラノーマを56.4%しか言い当てませんでした。同じ写真でも、AIによって見逃しやすさと言い過ぎやすさが大きく違いました。
対象: 病院で撮影された、メラノーマかほくろと診断された人の写真 / 限界: 短い報告で、スマホで自分で撮った写真では調べていない。
03 まだわかっていないことAIの判定で、怖くなった気持ちはどうなる?
はっきりわかっていません。「高リスク」と出た人の不安を調べた研究は、今回は見つかりませんでした。研究者は、良性のものを高リスクとする判定が不安や受診の増加につながりうると指摘しています。
- AIの判定で「高リスク」と出た人が、どのくらい不安になり、どのくらい続くかを測った研究は、今回は見つかりませんでした。保険の請求データの研究でも、著者らはこの点を課題として挙げています[1]。
- 紹介した研究は主にヨーロッパの人の肌で調べています。日本の人の肌で同じ精度になるかはわかりません。
- チャットAIに一般の人がスマホで撮った写真を見せたときの精度は、十分に調べられていません[4]。
04 今日からできること「がんの疑い」と出たら、何から始める?
まず、AIの判定は診断ではないと受け止めます。そのうえで写真と変化のメモをそろえ、皮膚科を予約します。自分で取る、何度もAIに聞き直す、ということはしません。
AIの判定は「受診の目安」と受け止める
「高リスク」は「医師に見てもらったほうがいい」という意味で、がんと決まったわけではありません。研究では、高リスクの約3分の1が皮膚科医の確認で低リスクに直されていました[1]。
目安 1分
写真と「変化のメモ」をそろえる
明るい場所で、定規や硬貨を横に置いて撮ります。いつからあるか、大きさ・形・色が変わったか、かゆみや出血があるかを3行ほどメモします。昔の写真に写っていれば、それも役に立ちます。
目安 10分
皮膚科を予約する
ほくろや皮膚のできものは皮膚科です。急に大きくなった、出血する、形や色が変わってきた、というときは早めに予約します。AIの結果は、気になったきっかけとして伝えれば十分です。
目安 予約の電話5分
受診までは、さわらない・聞き直さない
自分で取ったり、薬を塗って様子を見たりはしません。別のAIに何度も聞き直しても、答えは決まりません。AIによって判定の傾向が大きく違うことがわかっています[4]。
目安 受診の日まで
「良性」と言われたあとも、変化だけは見ておく
皮膚科で問題ないと言われたら、AIの判定ではなく、その診断を基準にします。気になるときは同じ角度で写真を撮っておくと、次に受診するときに変化を伝えやすくなります。医師から経過を見る時期を言われたら、それに従います。
目安 写真1枚・1分
AIに体のことを相談して不安が残るときの考え方はAIに症状を相談したら「様子を見て大丈夫」と言われたで、医師にAIの話をしにくいときはAIの健康アドバイスで自己判断していたことを、医師に言い出しにくいで整理しています。
05よくある質問
AIのアプリでほくろが「高リスク」と出たら、がんの可能性は高い?
「高リスク」は、がんと決まったという意味ではありません。オランダで一般の人が使った研究では、アプリが高リスクとした画像の33.8%が、皮膚科医の確認で低リスクに直されました。ただし本当にがんのこともあるので、自分で判断せず皮膚科で診てもらいます。
チャットAIにほくろの写真を見せて「良性っぽい」と言われたら、病院に行かなくていい?
それだけで安心はできません。病院での研究では、がんや前がん病変のうち13.1%が、アプリで「低リスク」と判定されていました。チャットAIでも、メラノーマの半分近くを見逃したものがありました。大きくなる、形や色が変わる、出血するなどの変化があるときや、気になり続けるときは皮膚科で診てもらいます。
何科に行けばいい?予約のときに何を伝える?
ほくろや皮膚のできものは皮膚科です。予約のときに「ほくろの変化が気になる」と伝え、いつからあるか、変わったと思う点、AIの結果を見たことを話します。AIの結果は判断の材料ではなく、気になったきっかけとして伝えれば十分です。
別のAIにも聞いて、意見が分かれたらどうする?
聞き比べても答えは決まりません。同じ写真でも、AIによって見逃しやすさや言い過ぎやすさが違うことが研究で示されています。何度も聞き直すより、皮膚科で見てもらうほうが早く確かな答えになります。
出典
- Smak Gregoor, A. M., Sangers, T. E., Bakker, L. J., Hollestein, L., Uyl-de Groot, C. A., Nijsten, T., & Wakkee, M. (2023). An artificial intelligence based app for skin cancer detection evaluated in a population based setting. npj Digital Medicine, 6, 90. https://doi.org/10.1038/s41746-023-00831-w
- Sangers, T., Reeder, S., van der Vet, S., Jhingoer, S., Mooyaart, A., Siegel, D. M., Nijsten, T., & Wakkee, M. (2022). Validation of a Market-Approved Artificial Intelligence Mobile Health App for Skin Cancer Screening: A Prospective Multicenter Diagnostic Accuracy Study. Dermatology, 238(4), 649–656. https://doi.org/10.1159/000520474
- Freeman, K., Dinnes, J., Chuchu, N., Takwoingi, Y., Bayliss, S. E., Matin, R. N., Jain, A., Walter, F. M., Williams, H. C., & Deeks, J. J. (2020). Algorithm based smartphone apps to assess risk of skin cancer in adults: systematic review of diagnostic accuracy studies. BMJ, 368, m127. https://doi.org/10.1136/bmj.m127
- Boostani, M., Lallas, A., Goldust, M., Nádudvari, N., Lőrincz, K., Bánvölgyi, A., Holló, P., Wikonkál, N. M., Paragh, G., & Kiss, N. (2025). Diagnostic performance of multimodal large language models in distinguishing melanoma from nevi in clinical and dermoscopic images. JAAD International, 23, 58–60. https://doi.org/10.1016/j.jdin.2025.08.008


