亡くなった家族をAIで再現する話が出たら。研究では「また話せる」慰めと「別れが難しくなる」心配の両方があり、先に本人の意思と家族の気持ちを確かめておく

亡くなった親や配偶者の声や話し方を、AIで再現できるサービスがあると聞いた。家族の誰かが「作ってみたい」と言い出した。もう一度話せるなら、と心が動く一方で、本当にいいのかと迷うのは自然なことです。研究はまだ少ないものの、遺族や専門家が何を期待し、何を心配しているかはわかってきました。作るかどうかを決める前に、家族で確かめておきたいことを整理します。
3行でわかる
- 故人を再現するAI(グリーフボットなどと呼ばれます)が悲しみを軽くするかは、まだ確かめられていません。研究は、人々の考えを聞いたものが中心です。
- オランダの遺族159人の調査では、悲しみの治療で使えるなら使いたい人は25%でした。「また話せる」慰めと、「偽物」「別れが難しくなる」心配の両方が語られていました。
- 作る話が出たら、本人が生前どう望んでいたか、家族それぞれの気持ち、使い方とやめ方を、先に確かめておきます。
01 結論から言うと亡くなった家族をAIで再現するのは、心に良い?
良いとも悪いとも、まだ言えません。慰めになるという声と、別れを受け入れにくくなるという心配の両方があり、効果を確かめた研究は見つかりませんでした。だからこそ、作る前に家族で確かめておくことが大切です。
故人の写真や声、残したメッセージをもとに、その人らしく話すAIを作るサービスが出てきています。研究では、こうしたAIを「グリーフボット」「デッドボット」などと呼んでいます。
研究者や遺族が心配しているのは、AIが悪いものだから、ではありません。慰めになる力と、別れを難しくする力が、同じ「その人がまだいるように感じられる」働きから生まれるからです [2]。誰にとって、どんな使い方なら支えになるかは、人によって違います。
02 研究とデータでわかっていること遺族や専門家は、故人を再現するAIをどう見ている?
遺族は「さよならを言える」「また話せる」ことに意味を見いだす一方、「偽物だ」「悲しみの過程を妨げる」「頼りすぎる」という心配も多く挙げていました。専門家は、使うなら支援者のもとで、安全策つきで、という考えでした。
van Oostrum ら(2026)[1]
故人を再現した映像を使う支援の動画を見たあと、賛成と反対の理由を3つずつ書いてもらった。遺族は「さよならを言える」「やり残したことを伝えられる」に意味を見いだした。反対の理由では「偽物・作り物だ」(125件)、「悲しみの過程を妨げる」(101件)、「心理的なリスクがある」(82件)が多く、「話し続けたくなってやめられない」という心配もあった。
対象: オランダの遺族159人と心の専門職126人 / 限界: 実際に使った人の結果ではなく、使ったらどうかを想像して答えた意見。
Lu ら(2026)[2]
故人を再現するAIについて、慰めや「つながりが続く感じ」がある一方、自然な悲しみの過程を乱す、頼りすぎる、データの使い方や故人の描かれ方に倫理的な問題がある、という心配が語られた。本人のはっきりした同意なしに再現してよいのか、と疑問を持つ人もいた。受け入れられるかどうかは、状況と、本人の心の準備しだいとされた。
対象: 中国・広東省の25人への聞き取り / 限界: 少人数の聞き取りで、数で一般化はできない。
Ponce ら(2026、系統的レビュー)[3]
AIの話し相手が更新や機能制限、サービス終了で変わったり消えたりしたとき、利用者が「別れ」に似たつらさや落ち込み、孤立感を語っていた研究が14本見つかった。
対象: 故人の再現ではなく、AIの話し相手全般の研究 / 限界: 多くは利用者の語りを分析したもので、つらさの強さや長さははっきりしない。
Toshishige ら(2026)[4]
がんで家族を亡くした日本の遺族539人のうち、うつの疑いがあった人は15.9%だった。故人との心のつながり(継続する絆)が強い人ほど、うつの疑いがあるオッズ(なりやすさを比べる指標)が少し高かった(尺度が1点上がるごとに1.05倍)。
対象: 全国の緩和ケア病棟で家族を亡くした日本の遺族 / 限界: AIについての研究ではない。一度きりの調査で、つながりがうつの原因かどうかはわからない。
倫理の論考では、故人を再現するAIは悲しみの過程に悪い影響を与えるおそれがあり、利用者が頼りきりになりやすいと指摘されています。そのうえで、使うなら、悲しみが長く重く続く人の治療用の機器として扱い、害がないことと役に立つことを確かめるべきだと提案しています [5]。別の論考は、死後の扱いについて本人の同意を得る仕組みが必要になりうると述べています [6]。
03 まだわかっていないこと故人のAIと話すと、悲しみは軽くなる?
わかっていません。実際に使った遺族の心がどう変わるかを、時間を追って確かめた研究は見つかりませんでした。日本の遺族が故人を再現するAIをどう受け止めるかの研究も見つかっていません。
- 見つかった研究は、使ったらどう思うかを聞いたものが中心です。実際に使った人の悲しみが軽くなるのか、長引くのかは確かめられていません。
- どのくらいの頻度や期間なら支えになり、どこから頼りすぎになるのかの目安は、まだありません。
- 子どもや、悲しみがとくに重い人に使ってよいかは、研究が見つかりませんでした。
- 故人との心のつながりが心の健康にどう関わるかは、文化によって結果が分かれるとされ、まだはっきりしていません [4]。
04 今日からできること家族をAIで再現する前に、何を確かめておく?
本人が生前どう望んでいたか、家族それぞれの気持ち、使い方とやめ方の3つを、作る前に確かめます。自分のことは、元気なうちに希望を書き残しておけます。どれもお金はかかりません。
自分の希望を、ひとこと書き残しておく
自分の声・写真・メッセージを、亡くなったあとにAIの再現に使ってよいかを、エンディングノートや家族へのメモに書いておきます。「使ってほしくない」「家族の中だけならよい」など、短くて構いません。研究でも、本人の同意のない再現に疑問を持つ人がいました。
目安 5分
家族一人ひとりの気持ちを、先に聞く
作る話が出たら、作る前に家族それぞれに「見たいか、見たくないか」を聞きます。慰めになる人もいれば、つらくなる人もいます。作らない、見ないという選択も尊重します。残したメッセージには、ほかの人の言葉も含まれることを念頭に置きます。
目安 家族で話す30分
使うなら、使い方とやめ方を決めておく
命日だけ、1回何分まで、など使う場面を決め、データを消す方法とサービスが終わったときのことを、始める前に確かめます。AIの話し相手が変わったり消えたりして、別れに似たつらさを語る人がいたためです。
目安 始める前に15分
悲しみが重いときは、先に人に話す
眠れない、日常のことが手につかない日が続くときは、AIより先に家族や友人、医療機関や相談窓口に話します。専門家は、使うとしても支援者のもとで、という考えでした。
目安 つらさが続くとき
家族がAIの話し相手にのめり込みそうなときの区切り方は家族がAIの話し相手にのめり込みそうで心配に、AIとのチャットがやめられないときのことはAIとのチャットがやめられないにまとめています。有料のサービスで支払いをめぐって困ったときは、AIの恋人・友だちアプリに課金しすぎたの手順が参考になります。
05よくある質問
亡くなった家族をAIで再現するのは、やめたほうがいい?
一律にやめたほうがいいとは言えません。研究では、慰めになるという声と、別れを受け入れにくくなるという心配の両方がありました。本人の生前の希望、家族それぞれの気持ち、使い方とやめ方を、作る前に確かめておくことが手がかりになります。
家族の一人が作りたがっていて、自分は見たくない。どうしたらいい?
見たくない気持ちは、自然なものです。受け止め方は人によって違うと研究でも語られていました。作る人と見ない人がいてもよいことと、自分には見せないでほしいことを、言葉にして伝えておきます。
故人のAIと話すのがやめられなくなることはある?
その心配は、遺族や専門家の多くが挙げていました。ただ、実際にどのくらいの人がそうなるかは、まだ確かめられていません。始める前に、使う場面と時間、やめ方を決めておくと、区切りをつけやすくなります。
自分が死んだあと、勝手にAIで再現されたくない。何かできる?
元気なうちに、自分のデータを再現に使ってよいかどうかを、エンディングノートや家族へのメモに書き残しておけます。研究者も、死後の扱いについて本人の同意を得る仕組みが必要になりうると指摘しています。
出典
- van Oostrum JM, Akalin D, Lenferink L (2026). Perceived opportunities and risks of using deepfake technology in grief treatment: a qualitative study among Dutch bereaved people and mental health care workers. European Journal of Psychotraumatology, 17(1), 2663660. https://doi.org/10.1080/20008066.2026.2663660
- Lu J, Yang M, Cui Y, Liu Y, Wong TKS, Hu Y (2026). Exploring public perceptions of artificial intelligence in bereavement support: a qualitative study of griefbots. Frontiers in Digital Health, 8, 1852514. https://doi.org/10.3389/fdgth.2026.1852514
- Ponce JLA, Vélez WAZ, Zavala GS, Mejillones JMP, Ruiz JCR (2026). Emotional Dependency and Parasocial Grief Following the Alteration or Loss of Companion Artificial Intelligences: A Systematic Review. Behavioral Sciences, 16(9), 1548. https://doi.org/10.3390/bs16091548
- Toshishige Y, Hasegawa T, Tanaka E, Aoyama M, Mori M, Morita T, Tsuneto S, Akechi T, Miyashita M (2026). Associations between depressive symptoms, attachment style, and continuing bonds among Japanese bereaved family members of patients with cancer: a nationwide cross-sectional study. BMC Psychology, 14(1), 905. https://doi.org/10.1186/s40359-026-04687-z
- Lindemann NF (2022). The Ethics of 'Deathbots'. Science and Engineering Ethics, 28, 60. https://doi.org/10.1007/s11948-022-00417-x
- Iwasaki M (2025). Digital clones of the deceased in mental health care: Promises and perils. Digital Health, 11, 20552076251332839. https://doi.org/10.1177/20552076251332839


